本書は「イスラーム美術工芸」と題しているが、実際には、本文の9割はガラス工芸史についてである。著者がガラス工芸専門なのはわかるが、「イスラームの美術工芸」と題するのであれば、陶器、金属器、織物、木工、装丁、なども均等に扱われていなくてはならない。
本書を「イスラームのガラス工芸」として評価すれば、一般向けに分かりやすく、しっかり書かれていると思う。が、やはり美術を扱う書としては、写真が小さく、白黒で質がよくないため分かりにくい。

本書は題名のとおりイスラームにおける美術工芸について書かれたものである。他のリブレットシリーズと同様に、用語についての解説も充実しているため、イスラームに関心のある一般の読者でも容易に読むことができると思われる。作者の文体もやはり一般向けに読みやすく書かれている。また写真などの資料も豊富で、イスラームについてあまり関心がない読者でも見るだけで楽しむことができるのではないだろうか。そういう意味も含め、本書を一度手にとって見てみられると良いと思う。