稲川怪談の定番話を収めた恐怖話集
★★★★☆
怪談話の名ストーリーテラー稲川淳二による、2007年の単行本。ベストというタイトルどおり、同出版社からの「恐怖がたり」シリーズ収録作より8編を収録。それにプラスして「生き人形・その後」と新作5話を収録している。再収録話は「サーファーの死」「グアム島」「富士の樹海」など現在でも話題になるほどの有名なものを中心にチョイスされており、改めて読んでもその恐怖度はかなりのもの。それに比較して、新録作の恐怖度はそこまでに及んでいないという印象(どこに恐怖を感じるかは人それぞれなので、一概には言えないだろうが)。新録作のうち「箱根の宿で」はラストがややコメディタッチになっているのが他の話と比べて異色で面白い。「生き人形・その後」は本当におまけ程度の後日談で、期待しないほうがいい。熱心な稲川淳二のファンなら既に「恐怖がたり」シリーズを全巻揃えている人も多いだろうから、あとは新作話に価値を見出せるかどうかにかかってくるが、正直言って微妙なところ。逆にこれから稲川淳二の怪談に触れてみようという人にとってはうってつけと言えるだろう。