「各論」で語る中国ビジネスの可能性
★★★☆☆
中国は分からない。その市場は複雑であり、地域によってケースによって、あるいは人によってその評価が異なる。1989年に天安門事件が起きた時には中国は分裂し崩壊すると言われたことがあったが、その予測は当たらなかった。その後、中国は開放政策と国家弾圧を交錯させ、経済発展を虫食い状に広げて、跛行しながらも発展を続けている。中国の行方は今後も予測が難しく、ビジネスの世界においては誰もが中国という国の潜在力を認めながらも、その対応には苦慮しているのが現実だろう。
こうした現状を踏まえながら、エアコンのダイキンが中国に進出して一定の橋頭堡を築き得たその秘訣を、本書は記している。ベンツやサントリーの成功事例を参考にしながら、同社は徹底した高品質を追求した。「空調のベンツになる」という姿勢が成功を招く大きな要因になったのである。
本書には基本的な成功要因の他に、その周辺を支える細かな戦略が具体的に記されている。中国ビジネスの落とし穴やニセモノ商品、さらには中国人との付き合い方まで、ノウハウは多岐に渡る。実例は著者の目を通したものであり、極めて臨場感に溢れたスリリングなものである。中国のビジネスは総論では語れない。各論で語ることに意味があり、また面白さもあるのだ。