不況を脱するには、金融緩和が必要
★★★★★
1.内容
サブプライムローンをきっかけとした世界金融危機が起こったが、そのせいで世界同時不況が起こってしまった。しかし、今回の不況は、決して過去に起こった不況より深刻とはいえない。過去の不況の原因を探ると、金融を緩和すべき時に、引き締めたりしたなど、金融政策のミスが多い。幸いにも、歴史の蓄積があるのだから、今回の不況を脱するには、貨幣供給量を増やすべきである。各国も同様のことをしている。
2.評価
私自身は、反論(p183から、など)もそれなりに一理あると思うこともあるが、著者の見解もそれなりに説得力があると思うし、ところどころに俗論を排するような展開があって面白い。ゆえに、現時点では星5つ。ただ、この本の評価は、後世まで待たれるだろう。
理論+歴史の手際の良い整理
★★★★☆
岩田氏は、新書では、初心者向けに経済学や金融論のわかりやすい解説本を何冊も出版してきた。
一方で、少し専門的なものとしては、「デフレ」や「昭和恐慌」に関する研究書がある。
本書は、1920年代以降の過去の世界不況をレビューし、それらの分析枠組みをわかりやすい形で提示したうえで、
それらの枠組みを用いてその解説を試みたものである。
わずか200頁の薄手の新書にしては、その内容は盛り沢山である。
時機をえた内容であり、一読を薦めたい。
読みやすい旬の読み物です
★★★★☆
08年に発生した世界金融危機の事の発端を、時系列に分かりやすく解説しており、
金融知識のほとんどない私にも読みやすいと思った。また、今回の金融危機だけではなく、
過去の歴史にある1930年代の世界大恐慌や昭和恐慌、さらには日本の90年代からの
失われた10年に関してなど、引き起こした理由や脱却するにいたった経緯が記されており、
過去の経済非常事態についてよく知ることができた。
末章では、今回の世界同時不況からどのように脱却すればよいのかを提言しており、
今後の日本政府や日銀の政策を見守る上で非常に興味深い文章も綴られている。
今だからこそ、とても興味深く読める旬の書籍ですので、ぜひこの時期に一読されてはと思います。
新書を超えた内容
★★★★★
新書をはるかに超えた内容。「今の」世界同時不況が、なぜ起こったかを、経済学の基礎にそって、図表などを用いながら、懇切丁寧に解説。いたずらに、カタストロフの恐怖を煽るのではなく、では、どうしたら、われわれはそうした状態から抜け出すことができるかまで、深い教養と広い視野を基礎として提言している。
この著者特有のサービスであるが、巻末には、本テーマをさらに深く理解するための書物が紹介されて、今どきこれほど「お買い得」な本もない。
素人をバカにして、上からものを言っていないところも好感が持てる。
著者が高く評価している、バーナンキFRB議長の、未邦訳研究書『Essays on the Great Depression』(2000年)は、ぜひとも入手して読んでみたい。
なお、金融商品等からのアプローチがないというレビュアーが二三見受けられたが、本書は、「歴史的アプローチで」と、断っている。まったく筋違いな意見で、本書のテーマ、ひいては、論考というものの書かれ方をまったく理解しておらず、もしかして、著者に怨みがあるのでは?と邪推してしまう。
緊急出版
★★☆☆☆
94年に財政政策の無用性を説いた著者の書物です。もっとも
96年には財政政策の有用性を説き、98年に公共投資を訴え、
99年に財政政策を否定し、2000年には財政政策について
そもそも言及しなくなっていますが、2周して(1周ではなく!)
元の位置に戻ってきたかな?という感じでしょうか。
緊急に出版されたということで、更なる1周が期待される書物です。