現実がちらついて集中できない……
★★★☆☆
ひょんなことからスピーチライターを目指す、ごくごく平凡なのOLの話。
さまざまな場面でのスピーチを挟み込みながら、主人公の成長がテンポよく描かれている。
スピーチの言葉も、登場人物たちのセリフも練られていて、ああ、いい言葉だなあ、と思えるものがいくつもある。
しかし、私の心にはなぜか響かなかった。
それらの言葉が小説に根をおろしていないように思えてしまった。
その原因の一つが、この小説に描かれている政治的なエピソードだろう。
巻末には実在する団体とは関係ないと書かれてはいるが、どうしたって政権交代をめぐる二つの政党をイメージせずにはいられない団体が登場する。
小説の中で高らかに「政権交代」を訴えれば訴えるほど、現実に政権交代してからのニュースが頭をちらちらとよぎり、むなしさに襲われ、小説の中の高揚感と気持ちが寄り添えないのだ。
(これは原田さんのせいではないけれど、でも、できればもっと、現実とは違う設定だったら、と思ってしまった)
また、与党の存在自体や政策を、打倒すべき「悪」として描くのは、あまりにも単純化されすぎではないだろうか。郵政民営化とか後期高齢者医療制度とか、問題はあるかもしれないが、ベターな方法を探る中で決められたこと。現実の難しさを一切無視して、イメージだけで、「悪」として扱っている気がしてしまった。
雰囲気だけで片付けず、きちんと調べたうえで描いてほしかった。
よくできている話だなあ、よくできたスピーチだなあ、と終始、遠くから眺めるように、冷静に最後まで読みとおしてしまったことが本当に残念。平凡な主人公が、偉大なお師匠さんに才能を見いだされ、ライバルと力を尽くして戦うという、少年漫画のような王道ストーリーは楽しく読んだのだが。
私は少なくとも3回、心が熱くなりました。 そう、まっすぐだから。
★★★★★
大手企業で優雅に気ままなOLをしている主人公・こと葉。
だいたい仕事中は暇で退屈だ。
そんな彼女が片思いをしていた幼なじみの結婚式に出席する。
披露宴で大企業の社長がスピーチをしていると、
こと葉は舟をこぎだした。
テーブルの上にはスープの入った皿。
あまりの睡魔に我慢できなくなると、
大きな音を立てて、こと葉は皿に顔をつっこんでしまう。
幼なじみの披露宴で大失態。
恥ずかしさでホテルのホールへ出ると、
そこではタバコをふかす一人の女性がいた。
こと葉が受動喫煙に文句を言うと、
女性はさっきの退屈なスピーチから
“逃げ出す”キッカケを作ってくれたことへの感謝を述べる。
物語はここから大きく動きます。
立ち読みで中身を確認できる方は、
カバージャケットの袖がオススメです。
そこを読んでから本書を読み始めると、
とても滑らかに読み進められました。
スピーチライターという職業設定なので、
登場人物がスピーチをする場面が幾度か出てきます。
なかなかいいスピーチですね。
この本の一番良いところは、
登場人物の多くが、筋を通し真摯な言動を取ることろだと思いました。
なので、読んでいる最中も読み終わった後も、
とてもすがすがしいです。
「いいえ、彼女は、これが難しい、
ひょっとしたら無理かもしれない、とわかってて挑戦しているの。
そりゃあ見ていてはらはらもするけど、同じくらいわくわくもする。
どうしてか分かる?」
天才スピーチ・ライター久遠久美のセリフです。
特に、このくだりからが私は好きです。
ここから物語はギア・チェンジして加速していった印象です。
恋愛ものじゃないです。
ミステリーでもないと思う。
青春物でしょうか、しいて言えば。
欠点もあります。
スピーチ・ライターという職業設定にも関わらず、
正しくない表現の言葉もあります。
人物描写に物足りなさも感じました。
ですが、それらを差し引いても、オススメできる一冊です。
作家デビューの『カフーを待ちわびて』でも思いましたが、
この原田さんという人は、ストーリーの構成が抜群ですね。
満足の5点です。
贅沢なひと時を味わう
★★★★★
今年読んだ中で最も人に薦めたい本です。原田マハさんの安定感のある、軽妙な文章と、心から語りかけるスピーチの数々。いつの間にか涙が溢れてきました。
言葉の力、魔力、魅力、説得力、……。そしてコミュニケーションの大切さが痛いほど伝わってきます。
素晴らしい小説であり、またスピーチの実用書としても一流。さらに、紅白の水引をあしらったカバーの下に隠された遊び心。贅沢な作品です。
この本だけは、文庫化されるの待たずに、購入をお勧めします。もし図書館で借りるなら、せめて本屋さんでカバーの下を覗いて下さい。それも読んだ後に!物語の余韻に心を委ねながら。
こんなに言葉が温かいなんて。
★★★★★
何度泣いた事だろう・・・・。
通勤の電車の中で思わず涙があふれ我慢するのが大変なくらいだった。
主人公の女性(二ノ宮こと葉)のずっと幼馴染として一緒に過ごして「片思い」をしていた男性の結婚式から始まる物語は安定した会社勤めを辞め「スピーチライター」として政治の世界まで行動を広げてゆく。
こと葉の好奇心・戸惑いそして成長を見ながら読み進めていくうちに「言葉」にはこんなにもすごい「力」があるのか、改めて「言葉」のすごさを再認識できた。
久美さんのハグには勝てないかもしれないけれど「言葉」にも「温かさ」という温度がある事が本当に良く分かる。
今までで一番多く泣いた本になっちゃったなぁ。
映画でも見たくなりました
★★★★☆
コミカルな作品で読みやすいです。
また、主人公の成長が気になり、一気に読み終えました。
なるほどと頷ける点も多く、読み終えた後には何かしら心に残ると思います
言葉の大切さを知らせるために、中学生の息子に読ませたくなりました。