宇宙人のように凄い
★★★★★
舞曲の右回り/左回りが手に取るように見えるようなリズム感、
一瞬足りとも耳が離せない、装飾音と装飾音の間のめくるめくような驚きの仕掛け、
線から線へと典雅に連なる「かたち」を際立たせる、和声の味付け、
これらを成り立たせるための、極々微妙で自然なテンポの揺れ。
凝りに凝っていながら、どこまでも自然で透明で清潔。
・・・技術だけでも、知性だけでも、心だけでも、こうは弾けない、
その高次元さは、宇宙人なのではないかと思うくらいすごい。
存在の全てが音楽の中に生きて初めて、生まれてくるものだろう。
平均率の第二巻など、フェルツマンのバッハは素晴らしいが、
このバッハでは、違う次元、違う境地に突入したことがわかる。
それは、音楽家として前人未到の境地だと思う。
パルティータの名演として欠くことのできない1枚
★★★★★
ウラディーミル・フェルツマンによるバッハのパルティータ全6曲と2声のインヴェンション全15曲を収録。
録音は1999年モスクワで行われている。このカメラータの国内盤はリーズナブルで良心的。
1952年生まれのフェルツマンは1971年のロン・ティボー・コンクールでのグランプリ受賞以来、世界で活躍しているが、国内盤のリリースが少ない
事もあって、日本での認知度はやや低いと思われるが、実力確かなピアニストで、聴きもらすには惜しい存在である。
このアルバムはそんなフェルツマンの円熟を示す素晴らしい内容だ。
バッハのパルティータとなると、その楽曲の素晴らしさに比し、まだまだアプローチの手法は多く残っていると思われる。
個人的にその荘厳な美しさで秀でていたヴェデルニコフ盤が廃盤なのはたいへん残念である。
それでも、グレン・グールド、リチャード・グード、アンドラーシュ・シフといった人達の録音はどれも意欲的で芸術化特有の精神的なひらめきを
感じさせるものであった。
それでも、やや薄手の感のあったこのジャンルに、このフェルツマン盤が加わったことがまず慶賀の至りである。
この演奏の特徴は、ピアニスティックな響きを十分に生かし、豊な躍動感により瑞々しくバッハを歌いつくしている点にある。
といっても、その歌は押し付けがましいものではなく、自然な音楽のアウトラインに即しており、気品がある。
中でも短調の3曲(2番、3番、6番)の音楽の全体像の大きなフォルムは、この演奏を推す大きなポイントである。
第2番のシンフォニアは雄大なドラマを秘めて響くし、クーラントの機能美も純然として高潔だ。第3番のスケルツォは小気味の良い切れ味がと軽や
かな低音が見事にマッチ。
また第4番のアルマンドのような典雅な舞曲も雰囲気がとてもいい。
パルティータの名演として欠くことの出来ない1枚と言っていいすばらしい内容だ。
パルティータの決定盤
★★★★★
まず第一に音そのものの美しさがずば抜けており、聞いているだけで
心地よさに満たされます。テンポも適切で落ち着いておりバッハにありがちなせかせかした感じが全くありませんので、音楽に十分に浸れる
理想的な演奏となっております。数あるパルティータのCDのなかでも自信をもってすすめられる第一の決定盤です。