ジュエルは貴重な宝石だ。と言っても、単なるつまらないダジャレではない。この1時間の1999年度作品で紹介されているジュエル・キルヒャーとは、まさにそういう存在なのだ。本作はコンサート映像を中心にして、インタビュー、昔の演奏風景、バイオグラフィー的内容を盛り込んだもの。さらに、同じ99年のショーから、3曲のボーナス・ソングを収録。ただ、問題もある。アラスカ生まれのジュエルがスターダムの道を歩んでいく過程は非凡（uncommon）かもしれないが、彼女の音楽は非凡とは言いがたい。ジュエルの声は素晴らしく、ソロにおいても、ロック・バンドとの共演においても、力強さと清純さをみなぎらせる。しかし、楽曲のほうはそれほどでもなく、真面目な内容ではあるが、青臭い教訓調が鼻に付く。コンサート・ステージよりも大学のコーヒー・ハウスのほうが似合いそうな音楽なのだ。全体的に見て、本作はドキュメンタリーというより宣伝用ビデオに近い。ジュエルの母親や、レコード会社のチーフ、エージェント、ツアー・マネージャーからの熱烈な賛辞が並ぶあたり、もろにプロモ調だ。ジュエルのファンは喜ぶだろうが、この『A Life Uncommon』が大勢の新たな崇拝者を生むことは期待しないほうがいい。（Sam Graham, Amazon.com）