現代語訳にもう一工夫がほしい(間違っていたら御免)
★★★★☆
続日本後紀 序
臣良房等、竊惟、史官記事、帝王之跡攅興、司典序言、得失之論対出、憲章稽古、設沮勧而備遠図、貽鑒将来、存変通而垂不朽者也、伏惟先皇帝、体元膺、司契脩機、夢想華胥之新拱黙大庭之観、以為、承和撫運、歴稔惟長、善政森羅、・・・(返り点省略)
森田悌はこう訳している。
臣藤原良房が窃かに思いますに、史官(記録係)が記載することにより、帝王の事跡が集積され、司典(編纂係)が整った文章とすることにより、事跡の得失について議論し、基準に則って過去について学び、悪を止めて善を勧め、遠大な計画に備え、将来の手本とし、事に応じて自在に行動することを可能にするところの、不朽のものとして後世に伝わることになります。伏して思いますに、先帝文徳天皇は善徳を身につけて皇位に即かれ、民心に適うよう心がけて万機を修め、天下太平の国を追い求められました。・・・・
臣良房等、・・・存変通而垂不朽者也 を森田は一文として訳すが、この一文なにを言っているのかさっぱりわからない。なにが「不朽のものとして後世に伝わる」のか訳文を読んでもわからないのである。対句表現ないしは駢文に気がついていないようだ。
史官記事、帝王之跡攅興、司典序言、得失之論対出 は四六四六で、これで一まとまりである。
憲章稽古、設沮勧而備遠図、貽鑒将来、存変通而垂不朽 は四七四七(助字の而を除けば四六四六)でまた一まとまり。
それぞれのまとまりをきちんと分け、二つのまとまりがどうつながるのか考えてから訳せばよいのだ。そうすればだらだら訳すことがふせげ、者也に引掛かって「ところの」などと余計な語句を挟むこともあるまい。
以下、典故も平仄も調べぬまま拙速の訳をかかげる。知識のある人はまともな訳を工夫していただきたい。
臣藤原良房が窃かに思いますに、史官(記録係)が記載することにより、帝王の事跡が集積され、司典(編纂係)が記事を整序することにより、事跡の得失について論がたたかわされます。(こうしてできた)原則に則って過去を学べば、悪を止め善を勧めて遠大な計画に備えることができますし、また後の手本として残し未来に役立てれば、事に応じて自在に行動して不朽の名を後世に伝えるものであります。