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[新装版]陸奥宗光とその時代

価格: ¥1,575
カテゴリ: 新書
ブランド: PHP研究所
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   陸奥は、明治を代表する外交官であり、日清戦争の講和条約である下関条約において、全権として活躍したことが知られている。その出自は江戸幕府御三家である紀州藩士であり、それだけに薩長藩閥が取り仕切る明治政府にあってはながく官職に恵まれず、西南戦争の際には政府転覆を画策したとして逮捕の憂き目にも遭っている。廃藩置県直前に紀州藩の藩政改革を断行し、徴兵による近代兵制を整えるなど、その持てる才は明治の俊秀たちの中でも抜けたものがあったが、時代はそれを十分に生かしきれてはいなかった。

   陸奥がその力を存分に発揮し始めるのは、明治政府の永年の懸案であった条約改正の任に当たるようになってからである。そしてその後、下関条約とその後の三国干渉を乗り切るまで、もっともよく陸奥を理解し、その能力を全開にさせたのは伊藤博文だった。その意味で伊藤もまた政治の天才であったことが知れる。彼らによる当時の日本の外交力は世界に冠たるものであり、それが日本を先進国に押し上げたことが、本書からうかがわれる。それはおそらく、日清・日露の両戦争に勝利した以上の役割を果たしたといってもいいのだろう。

   陸奥は死の間際に「健康が回復したならば、総理になって、三十年来の抱負を実現する」と語っていたという。おそらく陸奥が健在であればそれは十分可能だったであろうし、もし陸奥が薩長の出身であれば、それはおそらくすでに果たされていたはずである。明治という日本の近代化を実現した時代を、もうひとつの視点から描いた1冊である。(杉本治人)

■陸奥宗光を通して帝国主義時代の生々しい空気感に触れ、現代社会成立の淵源を知る。 ★★★★★
■■法律・近代的軍隊の整備、
日清戦争前後から三国干渉にかけての
諸外国との駆け引きなどは、
「帝国主義時代における国際的な地位」を確保した上で、
条約改正や、議会制民主主義の成熟を志向した、
囲碁将棋に例えるなら「数十手先を読んだ」布石だった。

■■明治憲法の制定に際し、
より成熟したイギリス式の
「議員内閣制」を志向したものの、
小党分立の危険を孕む当時の日本の国情を踏まえた上で、
伊藤博文の「プロシア式立憲君主制」を支持し、
政治の成熟に従って
「超然主義」から「議員内閣制」へと移行できる憲法を
完成させた。

■■1897(明治30)年8月、
陸奥は日清戦争前後の激務がたたって死去。
54の若さであった。

●著者・岡崎久彦氏は元外交官。
陸奥宗光の従兄弟・岡崎邦輔の孫。
外交官としての現実的な経験から、
「アングロサクソン(米英)との協調こそが
日本の国益につながる」と一貫して主張。

本書は、
幕末から日清戦争までの時代の日本の外交や政治で
重要な役割を果たした陸奥宗光について、
より「伝記的」であった前作『陸奥宗光』を、
より「政治外交史的」に整理したもの。
大変面白い ★★★★★
政治家というと所謂欧米のケネディとかゴルバチョフが今でもテレビ等で取り上げられていますが、この国にも陸奥宗光、小林寿太郎のような能力は勿論、人間的にも優れた政治家がいたことを日本人として誇りに思うと同時に、一般的にあまり知られていない現状を悲しく感じました。
豊かな素養に支えられた「生きた」外交史 ★★★★★
とにかく面白い。「外交官とその時代」シリーズ全体について言えることだが、教科書的に叙述してしまえば砂を噛むような歴史でも、著者の筆にかかると歴史の襞に隠れたドラマが明らかにされ、ついつい引き込まれて読んでしまう。読んだ後で、なぜ面白いのかを考えると、結局は「生きた歴史」ということに突き当たる。

専門学者の書く歴史の通史にはとかく、過去の事実を完結したものとして淡々と描写する傾向が強い。しかも、常に「最新の研究動向」に注意をはらって書く結果、無味乾燥で「客観的」に見えても、知らずしらずに現代の価値観を持ち込んで過去を裁断していることが存外多いのである。これに対して本書は、当事者の回想や同時代の史料を駆使し、各国の立場を検討して、読者を外交の決断が行われる現場へと誘ってくれる。第一線で外交や防衛政策の実務に携わりながら、常に歴史に立ち返って思索を続けてきた経験の積み重ねが、彼の著作に現れているのだろう。

シリーズの中でもこの第一巻は恐らく一番面白いのではないだろうか。岡崎氏は陸奥の従兄弟の孫にあたり、二巻本の陸奥宗光伝をすでに上梓されているから当然でもあろうが、陸奥の育った時代背景や家庭環境、思想傾向の分析は充実した内容で読み応えがある。また他の巻が外交史的叙述に終始しているのとは対照的に、本書は陸奥の立憲政治、政党政治実現のための努力をも扱っており、日本の民主主義の歴史を考える上でも刺激的な本である。

文章も、平易でありながら、中国古典や漢詩・和歌などの豊かな素養を感じさせる。漢語表現が非常に的確であり、また随所に挿入される詩歌が陸奥の思想や当時の社会の雰囲気を効果的に伝えている。著者はウェブサイト「文語の苑」などで文語的教養の重要性を説いているが、本書もまさにそうした教養の産物といえるだろう。熟読玩味するに値する作品である。
日本人のみんなに読んでほしい! ★★★★★
600ページの長編であるが、面白い。啓発される。そして、これまで教えられてきた明治維新以降の歴史観が「薩長史観」だったということに気づかせてくれる。薩長閥で占められていた権力構造のために、我々は知らぬまに、薩長の観点からの歴史観・物の見方をさせられていたわけだ。
本書のすぐれている点は、①現代の視点と②その時代の通念である時代精神の視点という複眼から、外交史を軸に、該博な知識のもとに人物を描き出し、そこに目からうろこが落ちるような「見識」が見られるところにある。私は、アンダーラインを引きっぱなしで、書棚から陸奥宗光の著書『蹇蹇録』などを広げずにおれなかった。刺激を与えられ続けた。日本のデモクラシーの成立過程が理解できるなど、論点がぎっしり詰まった啓蒙書だ。
小学生でも読めるようにほとんどの漢字にルビがふってある。そこに国民教科書でありたいという気迫が感じられる。日本国民に訴え、やがて英訳して世界に訴えたいという魂のこもった一級の評伝である。
陸奥宗光とその時代について ★★★★☆
陸奥宗光がいなければ、独立国家としての今の日本は無かったかも。

子供のころに味わった父の理不尽な処置がいつか復讐してやるという生きる力となり、坂本竜馬との出会が彼の才能を開花させ、これからの日本のありかたや陸奥の志ができたように思う。諸外国に不平等条約を改正させ、日本の未来を見据えて行動していく様は凄い。彼が達成できなかった議会民主主義も、彼の死後引き継がれて今の日本の政治体制になっていく様が客観的に書いてあるところがいい。