著者のまとめ方には、納得いかないところもある。
★★★☆☆
タイトルで想起されるビジネスマン向きの実践的な内容ではないけれども、若い人へのメッセージとしてとして、仕事を含めた生き方論として読み甲斐がある。デュボワ氏のキャリアデザインの考え方も共感を覚えるし、企業トップが自分の言葉で語っているのもいいと思う。しかし、まとめ方自体にはいささか納得いかないところもある。
たとえば、著者は日本では「失敗したら恥ずかしい」というのを行動しない言い訳にして、逃げていると言う。「(デュボワ氏を含め外国人は)「恥ずかしいからしない」と言われたら侮辱されたと感じる」のだそうだ。なぜなら「そんなことを恥ずかしいと思うほど、あなたは心の狭い人間だと言っているようなもの」だからだという。「チャレンジした上での失敗は、本当に恥ずかしいのでしょうか」との問いには、ノーに決まっている。
だが、そうではなくて、日本では「恥」の概念が異なっているのだと思う。日本人が「恥ずかしい」と言う時は、英語で言うところのEmbarrassment(決まりが悪い)とAshamed(恥じる)の両方が入り混じっていることが少なくない。相手を失望させることを気に病むのは日本人らしい気遣いでもあり、同時に自分自身に対して「恥」であるという二重の意味で「恥ずかしい」のである。殊に失敗を「研鑽不足による己の恥」と捉えるのは日本の精神文化の根底にあるものではないだろうか。
また、「努力はするけれど、それから先はある種の運命に身を委ねる、神様の声に従う---そういう生き方もあるのだということを日本のみなさんにも知って欲しいと思います。宗教の少ない日本には、こうした考え方に馴染みがないかもしれません。」と言っておられるが、日本人の精神性について、こうした言い様はあまりに無知だと感じる。
友人だという少年音楽家の話では、優勝トロフィーを「気に入ったのなら持っていっていい。そんなものはいらない」と、そのガキ---ではなくて天才少年は著者に言ったそうである。それに衝撃を受けたというデュボワ氏は、「重要なのは本質なのだ」と語る。そして行きつけのレストランについて「料理がとんでもなくおいしいわけではないが、心がこもっているという仕事の「本質」があるから通う。人生で何より問われるのは、本質があるかどうかだ」と続ける。しかし、レストランの仕事の本質とは、まず「美味しい料理を供したい」ということではないのか。
付け足せば、インタビュー中、著者が自分を「芸術家」と呼んでいるのだが、何となく鼻白む。フランスでは普通なのかもしれないが、日本では「〜家」という呼称は、例外はあっても一般に本人が使用するものではない。言ったとしても「音楽家」というのが妥当だと思う。(最近は自分で「アーティスト」と名乗る人々もいるにはいるけれど)
あげつらったようになってしまったが、こうした違和感や多少独善的に感ぜられる部分については、日本語表現が的確でないせいもあるだろう。もっとも、この本の最大のポイントは、文中でシャネル日本社長も言われているように「(日本人の好きな)外国人による日本批評」を外国人インタビュアーがまとめているという点にある。仏語か英語によって欧米の価値観を基軸に行われていることを考えれば違和感があるのは当り前で、その意味ではそれぞれの話の中に気持ちに響くものがあればそれで良いのかも知れない。
ちょっと題名に異議アリ
★★★☆☆
この本を読み、世界における日本の長所・短所を再認識します。
外国人経営者がフィーチャーされているため、
第三者視点で日本が贔屓されているからでしょう。
内容や人選は本当にすばらしいと思います。
事実私はこの本(と伴う講演会&サイン会)でモチベーションを得ました。
ただ題名ががっかりなのです。
『日本人には教えなかった』と言っていいのでしょうか?
なぜなら本文に登場するリシャール氏も
「日本を動かす人に会うたびに言ってきた」
的な発言をしています。
また『仕事術』をいうより、
キャリアデザインに対するマインドに関するものです。
(しかし、これは大いに結果オーライです!!)
それにしても、
外国人でありながら、
日本でビジネスで成功を収めた方々の(ほぼ)生の声が聞ける本は、
ほとんどないのではないでしょうか?
これは良書です!!
ヒントとチャンス
★★★★★
『・・・仕事術』とはありますが、人生を、日々の生活を、お仕事の環境を、家庭を、より良く自ら変えて生きたい人には、たくさんのヒントが得られるのでは。
有名大企業のトップの話ですが、まるで、NHKの『Top Ranner』を見ているがごとき
ライブかんだありますよ!
おもしろい!
「オープンマインド」「水が流れるように生きる」「チャンス」「特に目標を決めずに・・・」「リスクテイカー」
キーワードがたくさんありますよ!
道に迷ったような気分の時、開きたい本です
★★★★★
「キャリア」とは「道」のこと。
ついつい「職業人生」のみに思いを馳せてしまいがちな「キャリア」という響きの中に、
もっと広く深い意味が隠されていたんですね。大事なことを教えてもらいました。
この本に登場する著名人たちも、その「道」の途中で失敗や挫折を経験されています。
何かを成し遂げるには失敗がつきものです。大事なのは、そこで何を学ぶか。
その学ぶ意欲、向上心を持てるか否かで、その後の行く末が決まる気がします。
思うに「キャリア」とは、懸命に前進した結果、振り向いたらそこにあるものなのかもしれません。
歩みを進める途中で、道に迷ったような気分に陥ったら、この本を開きたいと思います。
きっと良い道しるべになってくれると思います。
学生さんにも、推薦します。
★★★★★
タイトルは「すごい仕事術」といかにもテクニカルな極意を我が手にといった印象ですが、内容はもっとベーシックな、「生きる」というテーマに根ざしているように感じます。
”キャリア”という言葉についてユニークな発想を持つ著者の方と企業5トップの方によるユーモアあふれる魅力的な対談です。人生を多面的にとらえ、充実させていくことでモチベーションにも発展させる人間の力と人生の可能性を豊かに感じさせてくれる一冊だと思います。
「仕事術」とタイトルされていますが、学生さんにも広く読んでいただきたい本です。