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生物系統地理学―種の進化を探る

価格: ¥7,980
カテゴリ: 大型本
ブランド: 東京大学出版会
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当分野を日本語で学べる貴重な本 ★★★★★
 本書は,生物の多様性・進化・保全に関心がある方には必携の書と言えるだろう.(生物)系統地理学を扱った教科書としては,おそらく唯一,日本語で読むことができる貴重な本であるので,特に当分野の初学者の方々には,人類・植物・動物・昆虫その他の専門の生物種を問わず,お薦めである.

 系統地理学とは,地球上の様々な場所に生息する様々な生物種が,どのような歴史的経緯を辿って,現在のような地理的分布を得てきたのか,現在の生息環境に見られるように至ったのかについて,主にDNAデータの解析から明らかにしていく学問領域である.
 DNA解析の結果に基づき,複雑な様相を見せる生物の世界が,どのような歴史的要因によって成り立ってきたのか(例えば人類の祖先はどこに住んでいてどのようにして世界中へ広まったのか?ある深海魚はどこから来たのか?熱帯雨林はどうやって形成されてきたのか?等)を考える.さらに,各種の生物が各々の棲む環境へどのように適応してきたのかについても,DNA解析から得た強固な枠組みに基づいて考察する.

 上記の系統地理学から引き出される知見・視座は,恐竜絶滅以来の「大量絶滅時代」とも危惧される現代にとって,きわめて重要であるだろう.この有限の地球に同居している種々の生物の多様性とその成立過程(進化史)とを科学的に把握し,その貴重さをきちんと評価・理解することによってこそ,有効な保全方策を考えることができる.それを行うために,系統地理学は,分類学,生物地理学,生態地理学などの知見を統合し,さらに,それらに歴史的な意味づけを提供することができる.

 本書は,系統地理学の成立と展開に中心的な役割を果たしてきたカリフォルニア大学アーバイン校のジョン・C・エイビス教授が,自ら著した本の全訳である.原著の出版は 2000 年と既に 10 年近くが経つが,その内容は決して古くはない.むしろ,今後の進化・多様性研究,生物保全学などの展開を考える上でも一度立ち返るべき,基礎理論と基本的応用例がしっかりと記されたランドマーク的な書であると言えるだろう.
わかりやすい教科書的一冊 ★★★★★
 本書はPhylogeographyという分野の創始者であるJ.C. Aviseによる同名著書の訳本である。この分野はある種の分布の決定要因を時空間的に推定するため、生物の分布の決定に影響する地形や地史の評価に加え、近縁種間の分化過程の推定にも応用でき、急速に研究が進んでいる分野である。本書では前半でコアレセント理論など基礎となる理論について詳細に解説しており、後半で種内の系統地理と種分化などの種間の系統地理を、実際の研究例を紹介する形で解説している。
 本書はいくつもの点から、わかりやすくするための翻訳者の熱意を感じる。たとえば、登場する種は和名やそれに準じる説明が学名に併記されているため、どのような生物かイメージしやすくなっている。また、専門用語もカタカナではなく適切な和訳がしてあることも重要な点である。さらに、原著では目次が非常に簡略化されほとんど意味をなしていなかったが、この本では適切なセクションごとに目次が割り当てられているので、知りたい内容にアクセスしやすい。