奥深い信愛のかたち。
★★★★★
アメリカ映画とは違い、みなまでは語らずに、映画のコンテンツについて視聴者に、こころとこころを通じて語りかけてくるというところは、実にフランス映画らしい。
愛しの我が子どもが、不治の病だと判ったとすると。
我が子どもが、目の前でもがき苦しんでいるとすると。
それで、我が子どもに手をかけたとしたら、何も言わずに罪を受け入れるとすると。
そんなきもちを誰にも打ち明けることはせずに、こころの片隅で、ひたすらに我が子どもをずっと愛していることだけが真実としてあるのです。
この作品は、是是非非を問いかけるのではなく、理由を確かめるものでもなく、押し殺した感情の中に主人公の気持ちを伝えようとしたものです。
それと、小さいころよけ面倒を見てくれた妹が姉をこころの底から愛していること。
そう、このストーリーは、ひとつの”信愛”というものをテーマにしたものと思います。
これは、”深淵なる愛情”をこころで感じ取る作品です。
渋い!
★★★★★
さすが、フランス映画は違う。このしっとりとした情景に溢れた映画、本日、目いっぱい鑑賞。主人公はあまり綺麗ではない(ノーメーク?)けれども、憂いの帯び方が超一流。妹役もなかなか。憂いといえば、警部役の人物も。ミッシェルも捨てがたい、いい役。ただ、通りすがりの男との情事はわけわからず。最後の真相説明は、かなりわかりにくい。しかし、『シルヴィア』(ネルヴァル)をさりげなく持ってくるあたり、いささか心憎い、とも言える。全体として、かなり上質の映画でしょう。「渋い」ですよね。星5つ!
フランスって感じです。
★★★★☆
特に大仕掛けがあるわけでもなく、サラッと話しが流れていきます。
主人公(姉)の色彩のない存在感があり、その妹の一般人的な生活観ありで好対照を成して描かれています。
恋愛においても姉に気持ちを寄せる男性はある意味で抽象的・理想的な描かれ方をしているのに対して妹の夫は普通の人が普通に嫌うことや心配することを言葉と態度で表現しています。
映画の内容もさることながら、全編を通してフランスを感じられるところが気に入りました。
練りに練ったコッテリものをお好みの方は別にして、たまにはこんな映画もいいのではと思います。
上質の文学作品を読んだような後味の良さが残る。
★★★★☆
我が子を手にかけてしまい、15年の刑期を終えて出所した主人公ジュリエット(『イングリッシュ・ペイシェント』のクリスティン・スコット・トーマスが殆どノーメークで素晴らしい演技を見せている)が妹とその家族、友人などと触れあうなかで再び歩き出そうとするまでを丁寧に描いた、まるでシャンソン・レアリストのような映画。15年という刑期の設定に少し違和感を覚えたが、終り近くで“釈明は口実、死に口実などない”と一切の釈明を拒んだ主人公の思いが語られ納得する。余談だが、いま話題になっている元俳優Oの釈明は口実の塊だねぇ。登場人物では心に哀しみをもったミシェルもいいが、私にはジュリエットにオリノコ川への憧憬を語るフォレ警部の暗い双眸が心に残る。美しいラストシーンと共に上質の文学作品を読んだような気持ち良さが残る秀作だ。
寄り添い方がちょうどいい。
★★★★☆
さらりとした生き方を提示する作品。
終わり方にショッキングなものはなく、予想された中で、ああ、彼女らしい、という告白。
(肩書きが医療分析研究員というのが伏線になっている
無縁死、孤立死が危惧されている昨今、フランスでも状況は同じなのだ。
傷ついたものが社会に受け入れられるようにするには、あるいは受けいられるには、
周りの協力が不可欠なのだと気づかされる。
不存在だと言われてきた主人公が、周りとのかかわり・触れ合いから、
春を迎えるようにゆっくりと自分の存在を認めていくあたりが、
この映画の見どころである。