1960年代の香港で、ミミという恋人と同棲するヨディ(レスリー・チャン)が、サッカー・スタジアムの売店の店員スーからも想いを寄せられる。そんなスーを慰める警官ら、若者たちが紡いでいく群像劇。
ドラマチックな事件が起こるわけでもなく、淡々とした語り口から登場人物の心情を伝える展開が当時の香港映画としては斬新で、ウォン・カーワァイ監督は、この一作で世界中から注目を集めた。階段を駆け上がるカメラワークや、湿気が伝わってくるような熱帯雨林の映像に加え、時計が示す時刻の意味など思わせぶりな要素もたっぷり。映像や細部へのこだわりはもちろんだが、本作最大の収穫は、やはり香港トップ俳優たちの“旬”の魅力だろう。男なのに小悪魔的なレスリーを中心に、マギー・チャンの一途さ、アンディ・ラウの静かな包容力、そしてセクシーで奔放なカリーナ・ラウ…。この時代は良かった!と感慨もひとしお。(斉藤博昭)
映画と呼吸が一つになる
★★★★★
ある意味最高のエンターテイメント。影と音の醸し出す余韻、ジワジワと部屋の中に侵食してくるような緑色の空間の中で素晴らしい体験ができます。すべてをさらけ出した様なレスリーの演技がすさまじいです。
買いです。
★★★★☆
公開当時、「60年代の香港を舞台にした青春群像」との謳い文句に惹かれて劇場に足を運んだ記憶がありますが、今にして思えば、次作の「恋する惑星」での「カリフォルニア・ドリーミン」のような、わかりやすくその時代を彷彿とさせる曲が使われていなかったせいで、かえってリアル・タイムのアジアの片隅、自分もそこにほぼ同世代として属しているといった気持ちで見ることができたように思います。ストーリー自体より、それを表現する映像の処理と人物の造形が最大の見所である作品です。
香港電影黄金時代
★★★★★
最近のレンタルDVD屋のアジア映画棚の前で溜め息をついてしまう香港映画好きの人、手を挙げて!とかって嫌味を言いたくなる程、韓国作品に押されまくりの香港作品ですが、まだ韓国では、こういう大人っぽくて優雅な恋愛ものが撮られていない事を考えると、香港映画が持つ底力に期待してしまう。韓国映画は嫌いじゃないし、香港映画界自体が、かつての様な力を持ち得ていない事情は承知の上なんだけど。カーウァイもこの頃は良かったなー。てか、カーウァイには好き勝手させないで、具体的に、こんな映画を作れ!て命令する人が必要かも。近年のグダグダぶりが嘘のような、きちんとした脚本だし。この映画では、主役のレスリーを輝かせるべく細心の注意が払われてるだけでなく、出番の短い他の明星達も観客の印象に残るように気を配っている。だけど最近は、トニー・レオンとマギー・チャン以外はどーでもいいっす、て感じだし。本作で、カリーナ・ラウにやられましたよ、私は。ハスッパで海千山千に見える女の一途な純情を、こんなに切実に可愛らしくも大人の色香満点で演じられちゃったら・・・参るわ。最近はチャン・ツィイーがこのてのキャラを独占状態ですが、青いよ、小娘、出直しといで!て、言ってやりたくなりませんか?
陶酔、甘美、官能的。正に刺激的な傑作。必見!
★★★★★
そそられる、、、。1960年を舞台に、香港のトップ・スターたちが織りなす運命の出逢いと別離、思慕、一瞬の夢、そして死。いわゆるドラマとしての起承転結が明快に提示されないにも拘らず、全編を漂う強靭なストイズムとスタイル、香り高さ、強烈な色気、そこはかとない陶酔と甘美な趣。ねっとりした色調に、ロー・アングル、ハイ・アングル、ステディカムと何でもありの縦横無尽なカメラワークに感嘆しながら、フィリピンの原生林をバックにゆったりと流れる、郷愁を誘うザビア・クガードのラテン・ナンバーの官能的な響が、いつまでも心に残って離れない。
ウォン・カーウァイ、日本でのブレークの記念すべき一作。正に、カルト・オブ・ザ・カルトと呼んで相応しい傑作だ。
何か感じるはず
★★★★★
不思議な感覚を覚える作品ですが何か感じるはずだと思います。レスリー・チャン演じる主人公は一言で言ってしまえば【どうしようもないヒドイ男】なのですが切ない気持ちが見ていると溢れてきます。アンディ・ラウ出演作ではこれが一番好きです。アンディは格好いいヒーローよりもこんな役の方が合っている!むしろ格好いい!と…ファンが感じないであろう感想を持ちました。でも主人公の役はレスリーはこういう人間か?と錯覚してしまうほど。リマスター万歳!