充実の短編集
★★★★★
「初恋姉妹」(全3巻)の東雲水生の新たな短編集。
体裁としては、「雨柳堂夢咄」系列のものだが、「心」を扱う骨董店、及び店主、猫目堂へ誘
う黒猫など、出しゃばりすぎることなく、短編の主人公たちの「心」の動きを十二分に表現し
ている作品として評価できる。
「初恋姉妹」では、綺麗すぎるほどに純粋な恋愛物語を描いていたが、これは同性愛というマ
イノリティや友情と愛情の交差する心情、幼馴染みの約束に囚われ迷う心など、5編の作品が
描かれており、短編集として構成、展開、心情表現ともに完成度の高い作品に仕上がってい
る。
無論、些かの注文をつけたいところはあるものの、そうしたものを鑑みても、十二分に短編集
として百合好きにはオススメ、そうでなくとも薦められる短編集に仕上がっている。
どろどろしたところもなく、綺麗な作品を読みたいのなら「初恋姉妹」であろうが、個人的に
はこちらの短編集をオススメしたい。
「心」を見失い、迷う少女たちが進む未来を是非、堪能したいいただきたい作品である。
猫目に魅入られたあなたへ。
★★★★★
『初恋姉妹』の東雲先生が、だいぶん色を変えての新作となりました。
迷える者が偶然か必然かたどり着く、街の中の不思議な空間――を軸に、恋に悩む少女たちが訪れ、その解決の糸口を探し出してゆきます。
各カップルのなれそめから「現在」に至るまでの流れも丁寧に描かれ、一話一話感情移入しながら読めました。
余談ですがここ最近特に感じるのは、百合作品のレベルの全体的な底上げと、新分野への積極的な開拓であり、こういった作品がまだまだ出てくれることを願うばかりです。
ちょっとダークで、すご〜くピュアな百合ファンタジー
★★★★★
「初恋姉妹」でお馴染みな東雲水生先生による、百合ファンタジー連作集が単行本化されました!
同性の子との関係がギクシャクしてしまい、それに対する不安や焦りで自分を見失いかけている少女たちが、謎の黒猫に導かれて辿り着いた先に現れる不思議な骨董店「猫目堂」。
そこで、彼女たちは、見失いかけていたそれぞれの「本当の想い」を再び手にし、新たな一歩を踏み出してゆきます。
そのタイトルにも現れているように、時には自暴自棄になって、どす黒い感情に身を任せそうになったりする少女たちが、「本当の想い」によって踏み留まり、自ら選んだ道を歩き出す様には感動的なものがありますよ。
そして、ファンタジーでありながら、魔法やなにやらによる安直なハッピーエンドではないところも、東雲先生の百合に対するしっかりしたポリシーが感じられて、素晴らしいと思います。
今後の展開としては、「猫目堂」の女主人の正体(?)などが明らかにされることを期待したいですね。
あと、カバーイラストもそれぞれの少女たちの距離感を上手く表わしていて、とてもいいと思います。
一見地味ではありますが、現在における百合漫画の成熟ぶりを味わうことができるこの作品集を、百合に関心があるすべての方に一読してもらいたいですね。