多くの先入観を払拭しつつ、エーコ教授は読者をギリシャ・ローマの古典時代から現代へといざなう。そして、美を崇める時代、あるいは「寛容さへの執着、文化構造の複雑さ、絶対的で抑えることのできない多様な美への信仰心」が横溢する時代に生きる我々にとって、彼のこの研究が急務であると結論づけている。
エーコ教授は、絵画や彫刻を数多く取り上げてよどみない筆致で論述し、各時代の作家や哲学者の言葉を引き、また比較対照表も掲載して、自身にとって初めてとなるこの図版入りの本を深みのあるものにしている。本書は、すばらしい領域に足を踏み入れたいと願っている読者を美の世界へ導く、機知に富んだガイドブックだ。