三度怒った競馬の神様 サラブレッドに魅入られた男たちの物語 (スマートブックス)
価格: ¥0
小栗孝一と怪物オグリキャップとの十年愛、生殖能力を喪失したサクラユタカオー最後の賭け、元証券マン、ゼロからの牧場運営……
人と馬との強固な結びつきを描く、競馬ノンフィクションの最高傑作!
※本書は、同タイトルの書籍(二見書房刊)の電子化にあたり、加筆・再編集しました。
また、本書の内容は刊行当時の出来事について言及しているため、いくつかの物事は過去のものになっています。
しかしながら、競馬人の熱い想いを綴った本書は、時を経た今もなお多くの競馬ファンに愛される内容であることから、電子版を出版する運びとなりました。
【本文より】
物書きとしてスタートして以来、実に多くの人に会い、さまざまな話を聞いてきた。いざこうして形になると、濡れたダートコース上の蹄跡に似て、おぼろげながらではあっても自分の足跡をうかがうことができる。競馬というわけのわからない興奮に取り憑かれた人々の様子。僕が書きたかったのは、ひとことで言えばそれに尽きる。
競馬で、馬券で、僕たちはいつも試される。試されるからこそ興奮がある。興奮があるからこそ頑張って生きる気になる。そう、いつも競馬は僕たちを励ましてくれる。
【内容】
第1章 ニュージーランド競馬紀行――第九回JC馬・ホーリックスの物語
最高の馬が出るセリ市/セリ中に起こったハプニング/ブライトヒル・ファームのもてなし/ホーリックスのいる牧場へ/オサリバン調教師の言葉/金子さんからの質問
第2章 騎手がムチを置く時――東信二の五二九一鞍の物語
間の悪い一日/気配りの人/強固な決意/職人気質の代打男/決断の時/ささやかなセレモニー/変わりなき強烈な自負
第3章 家族牧場、二人三脚のダービー挑戦――京野夫妻とミツルリュウホウの物語
日高の小さな家族牧場/小さな体でがんばった/悪戦苦闘の日々/内地への出稼ぎを決意/愚直なまでの一途さと情熱を持つ男/岡田繁幸に見出される/零細牧場の賭け/わずか3ヵ月の闘病生活/お父さんのやり方は間違っていなかった/断ち切られた一本の糸/長年にわたる努力の結晶/かけがえのないクリスマスプレゼント/平成一五年のサマーセールにて
第4章 受胎ゼロからの再出発――サクラユタカオーと彼を見守る人々の物語
皮肉なタイミングの記事/内国産種牡馬のエース/シンジケート・ユタカオーの再結成/短期間に能力を凝縮するタイプのタネ馬/命ある限り……/危機にありながら幸せな馬/種牡馬サクラユタカオーの引退/サクラユタカオーの血を継ぐ者たち
第5章 生産者として、さらには経営者として――元証券マン・ミルファーム清水敏とユーワファルコンの物語
突きつけられた幸せ/決断力と邁進力を持つ男/証券の営業マンとして、抜きん出た能力を発揮/人との出会いに恵まれた/金がどんどんなくなっていく/経営者としての挑戦/牧場経営の本質
第6章 がんばれ! ホッカイドウ競馬――存続を目指す地方競馬の物語
危機に瀕するホッカイドウ競馬/頻出する存廃論議/開催廃止のドミノ現象/再起を賭けた門別開催/現場責任者・佐々木の苦境/対策室・小浜の奮闘/熱意の男・角南/生産界最後の砦/地方競馬再生の処方箋/追記
第7章 サンデーサイレンス亡き後の種牡馬地図――新しい道を模索する馬産地の物語
すべてにおいてケタ違いだった/無料の種牡馬に人気が集中する意味/一流種牡馬を導入できるのはJRAと社台だけ/「これ以上緩和された条件はない」/気力をなくしたときにすべてが終わる/サンデーを中心とした天動説/サイレンススズカはもう絶対に作れない/今後のシナリオ/サンデーサイレンスへの献杯
第8章 熱を帯びた記憶――小栗孝一と怪物オグリキャップの物語
上の世代の記憶/オグリはなぜ人を熱狂させたのか/最高成績は初年度だった/高いタネ馬の子が必ず走るわけではない/オーナーが貫く「意志」/オグリという巨大な熱源
最終章 三度怒った競馬の神様――わが友とバブルガムフェロー、サイレンススズカの物語
額縁の中の男/競馬の神様の怒りを買った/バブルカンパニーの九三/酔っぱらいたちの小さな冒険/神様のお恵み/後輩の置きみやげ/天井から舞い降りた賞金の幻影/巨大な力に捉えられたサイレンススズカ/ハイペースの至福
あとがき いつも競馬は僕たちを励ましてくれる
【著者】
河村清明(かわむら・きよあき)
山口県出身。北海道大学文学部国文科専攻を卒業後、株式会社リクルートに入社。1996年に同社を退社したのち、執筆活動を始める。同年、「優駿エッセイ賞」を受賞。
著書『馬産地ビジネス』『JRAディープ・インサイド』『馬産地放浪記』(以上、イースト・プレス)、『三度怒った競馬の神様』(二見書房)、『ウオッカの背中』(東邦出版)、『ウイニング・チケット』(原作、講談社)などがある。
電子書籍『ミスター・ジャパンカップと呼ばれた男 競馬国際化の礎を作り上げた「異端」の挑戦』『競馬 衝撃の敗戦列伝 敗北を糧に頂点を極めた名馬たち』『競馬 衝撃の敗戦列伝2 運命を分けた一戦の知られざる真実』『ウオッカvsダイワスカーレット 天皇賞 運命の15分と二人の厩務員』『JRAディープ・インサイド 主催者が語る日本競馬の未来』『超サバイバル時代の馬産地ビジネス 知られざる競馬業界の「裏側」』、『いのちを繋ぐ馬産地の物語 旅立つサラブレッドの原風景』(共著)など。
競馬関連の著作について業界の内外を問わず高い評価を得ている。