明治へと
★★★★☆
『八丁堀同心 加田三七』(上・下巻)に続く、加田三七ものの第3集。18篇が収められている。
村上元三にとって、加田三七は生涯を通して書き続けたキャラクターであったという。加田の活躍も、江戸後期・八丁堀同心の時代から、明治の中頃までの長期に渡る。本書に収められたのは、幕末以降を舞台としたもの。書かれた順番はバラバラだが、本書では年代順にまとめられている。
そのため、加田が次第に歳を取ってゆき、周囲の人間たちも死んだり、結婚したりと変化する。そのあたりに感慨があり、心にしみる。
「探偵」としては、あまり優秀な方ではなさそうだ。失敗したりも良くある。あるいは、政府当局の圧力に屈したり。それでも、人間味のあるキャラクターであり、味わい深い。
謎やトリックよりも、「人間」に重点が置かれた捕物帳だ。