1998年に国際的な大ヒットとなった「Believe」(過去の人となっていたシェールをチャートの首位を飾るアーティストへと変身させた曲)や、同じくクラブ・ミュージックのコンテンポラリーな手法を導入し、マーク・テイラー、ブライアン・ローリングズをプロデューサーに起用した「Song for the Lonely」、「A Different Kind of Love Song」もしっかりと入った、21トラック収録の本作は、シェールのナンバー・ワン・ヒットをすべて集めた初のアンソロジー。もちろん、ソニー・ボノとデュエットし、すべての始まりとなった1965年のボブ・ディラン風の曲「I Got You Babe」から網羅している。
フィル・スペクターの影響下からスタートしたことや、60年代~70年代の活動についての公正な評価についてはひとまず忘れて(とはいえ、キッチュな名曲として人気の高い「Dark Lady」、「Half-Breed」、「Gypsies, Tramps and Thieves」は、すべて本作に収められている)、80年代~90年代のシェールがダイアン・ウォーレン(「If I Could Turn Back Time」)、デズモンド・チャイルド(「Just Like Jesse James」)といったライター陣の力を借り、ポップなヒット曲を連発したことに焦点を当ててみよう――流行に敏感なポップ・ミュージック界の人間でさえ、新たな時代に彼女だけが返り咲くことを誰ひとりとして予測できなかったのだ。本作は、時代の流れすら変えてしまう不屈の意思の力に捧げられている――「曲ではなく歌手が肝心」という言葉の正しさをこれほど強力に裏づける例はほかにないだろう。(Jerry McCulley, Amazon.com)