スタンウェイの余情に潜む苦味
★★★★☆
ドメニコ・スカルラッティのチェンバロ作品を愛聴してきたが、ラモーのクラヴサン作品を聴くのは初めて。ドメニコより、感情の幅やニュアンスが深く、大きく、複雑な印象。このディスクがスタンウェイで弾かれていることも大きいか。
岡田暁生著『CD&DVD51で語る 西洋音楽史』(新書館)の高評により、アレクサンドル・タローのピアノによるディスクを手に取った。
岡田の言うように「クラヴサンよりピアノ」だ。現代ピアノでこそ表現できる感情の揺れが、ラモーの作品にはあるように思える。
冒頭作品の出だしなど、一瞬サティを思わせる。ロマン派(?)もかくやという感情表出も見え隠れ。音楽史にはまるで疎いので、適当なことしか言えないが、これはなるほどドビュッシーやラヴェルとも相通じる響きだ。何やら生の苦味や諧謔まで聴こえてくるではないか! それには、岡田も指摘しているようにチェンバロ(クラヴサン)とは異なるピアノの機能、「弾き終わっても後に残る響き」とも関わる。
アレクサンドル・タローは、今後要注目のピアニストだ。