台無し
★★☆☆☆
取材しているディレクターの質問が本当にイライラするものばかりで
なんかもう全部台無しだなあと思いました。
例えば、宮崎さんが
「これじゃダメで、、」
と説明してくれるシーンがあり
見ている方も、全部は理解できないにしても
なんとなくではあるけど
「なるほどなあ」
と思っているところにこのディレクターが
「なぜダメなんですか?」
と聞くシーンがあったり。
もののけ姫のメイキングの方が数倍面白いので
そちらをお勧めします
〜宮崎監督の生態を追ったディレクターの日記〜
★★★☆☆
この記録は、「宮崎駿監督の映画制作を捉えたドキュメンタリー」というよりは、
「宮崎監督を追い続けた荒川格氏のドキュメンタリー」といった方が、言葉の表現としては的確です。
密着取材に臨んだ荒川氏(カメラ&ディレクター)が、
主観的印象の強くなる手持ちカメラで撮影した映像に、彼本人による一人称のナレーションを乗せた結果、
「荒川氏の思い出を綴った日記」という色合いが非常に濃くなりました。
この、荒川氏主体の視点と語りは、
荒川氏の立場における臨場感を味わうには良いのでしょうが、
宮崎監督の"思考・思索の過程"に踏み込んでみたいと思って鑑賞する視聴者にとって、少なからず障害となります。
視聴者の視点や感情が、宮崎監督に行き着く前に、荒川氏の立ち位置に引き戻されてしまう為です。
なにしろ荒川氏は、宮崎監督に全面的に受け入れられてはいないのです。
その為、「宮崎さん、仕事の邪魔してゴメンなさい」という、妙な気まずさを終始感じ続けることになります。
当取材は、ともすれば創作活動に影響を及ぼしかねない個的空間へ介入して行われています。
時間的制約との闘いでもある制作現場に、深刻な打撃を与えてしまうかも知れません。
このような、他人に観察されながらの創作活動は、宮崎監督にとって相当なストレスだった筈です。
実際、思考を飛翔させんとする宮崎監督が、飛翔の足枷になるような質問を繰り返す荒川氏に対して、
オマエに構っているヒマは無いと言わんばかりにピリピリするのも、無理からぬ事だろうと思います。
もっとも、そんな創造の場でカメラを回したからこそ、出来はどうあれ貴重な記録となったのですが・・・。
■Disc1「準備編」2006年1月〜9月
二馬力(個人事務所兼アトリエ)での映画準備段階。
「ブラッカムの爆撃機」挿絵漫画制作。「崖の上のポニョ」イメージボード制作。
「ゲド戦記」試写の様子。福島県・鞆の浦にて映画構想固め。
独りになりたい宮崎監督の癇に触れ、荒川氏が取材を断念するまで。
■Disc2「絵コンテ編」2007年3月〜2008年6月
スタジオジブリでの映画制作がある程度進んでいるなかで取材再開。
宮崎監督の絵コンテ作業は、無意識の向こう側へ深く潜り込んで行う為か、何かと精神集中に干渉しがちな撮影は許されない。
その為、宮崎監督による原画チェック・修正の様子などが主な記録となっている。(コンテを切る場面が無いわけではありません)
制作に携わるスタッフ達の様子。作画打ち合わせの様子。絵コンテUPまで。
(音声の聞き取りにくい部分がありますが、字幕表示できます)
12時間30分の内には、「延々と続く日常」そのものの場面も多く、
どう考えても一般の方に向けられたドキュメンタリーとは言えません。
しかしながら、未知の何かをカタチにしようと格闘する宮崎監督の姿は確かに刻まれており、
その思考の発露である「描く」行為の瞬間に触れることが出来るのは又とない機会といえます。
志を同じくしてモノを作っておられる方や、宮崎監督その人のファンであれば、
非常に示唆に富んだ内容となり得ますので、興味深く(或いは殉教者のような気分で)鑑賞することは出来ると思います。
日々山積してゆく現実的問題とカットの山に頭を抱えながら、
嫌だ、違う、ワカラン、無理、今日もダメだとボヤキ、苦悩し、不安と闘い、疲労困憊しつつも尚、
一歩、また一歩と、這うように前へと進んでいく宮崎監督のその姿に、勇気付けられる方は多いのではないでしょうか。
宮崎監督の作品に対する姿勢を見れば、★5では付け足らない位ですが、惜しむらくは当記録のディレクションよ・・・と、複雑な気分です。
「荒川、脳内メーカーって知ってる? なんだアレ。不愉快だけど当たってるかなあ」(宮崎駿監督・談)
新たなジャンルかもしれない
★★★★★
ブルーレイ版を買いました。
なんだかすさまじいものが売られてしまったという印象です。
ほとんど危険物です。新たな商品ジャンルです。
どこかとんでもないところに渡りかけています。
ただ、どう見たらベストなのかわからない。
いわゆる映画やテレビのように見る物ではないように思う。
たとえばオフィスの一角に、24時間ループで延々3年くらい再生し続ける。洗面所とかもいいかも。
そして残業とか徹夜をしつつ、いつも通り仕事をする。
たまに通りがかったときに、思わず腕組みして見入って、
あ、こんな事してる場合じゃなかった、と、自分の仕事に戻る。
あいつらもやってる。おれもやる。という見方はどうか。
未だ良くわからないので、すこしずつ正座で見ています。
あと、この作品を撮った方(荒川格さん?)は、
ちゃんと社会復帰できただろうか。お仕事は続けられてるのだろうか。
こんな現場に立ち会って、人は正気でいられるのだろうか?
あ、思い出した。
知人の出産ビデオを見せられたときのショックに似ていると思う。
観る者を圧倒する12時間半!
★★★★★
鈴木敏夫プロデューサーが、どこかのインタビューで「宮崎監督の家にはブルーレイはおろか、DVDもない。だからいつもビデオで観ている」というコメントがあったが、まさしく本作はこの偉大なる「アナログ」監督・宮崎駿その人を追いかけたドキュメンタリーだ。しかし、現代のドキュメンタリーで12時間半というのも凄いが、収録中のスタジオ内のBGMに著作権が発生したため、半年も発売が延びた、っていうのも凄い。NHKも博報堂も何をしていたのか(笑)。宮崎監督は「ポニョ」を引退作品と考えていたようで「幕の引きがいがある作品に」と語っていたが、大石内蔵助のような悠然たる仕事ぶりを観ていると、まだまだリタイアはしないな、という感じだ。それにしても、天下の公共放送局・NHKが1私企業にカメラを持ち込み、ずーっと回しているという行為も尋常ではない。個人的に取材ディレクター氏の朴訥としたナレーションは嫌いではなかったが、世界中どこを見回しても、オスカー監督にこれだけ張り付いた例はない。弁当食べるとこまで写すことはなかったと思うのだが・・・。まあカップワンタンが好きなことはわかった(笑)。他にも「ゲド」に対する冷淡な対応とか、あからさまに機嫌が悪い日とか、これだけ「素」な姿を曝け出す必要がどこにあったのか。まるでジブリの社員になったかのような視点で12時間半を眺めていた。ドキュメントとしては5つ星を付けているが、編集して2時間くらいに出来た素材でもある。そういう点では逆に星ゼロだ。まあ、今回の「売り」が12時間ということだったので、緊張感ある半日を過ごさせてもらった面、それとあえてこのまま発売したことに5つ星評価です。
いくらなんでも長すぎ&しゃべり下手すぎ
★★★☆☆
宮崎氏の製作過程に張り付いていたディレクター本人がナレーションをしているんですが、ひどい喋りです。なぜ普通にNHKのアナウンサーを呼んでこなかったのかなあ。あと、12時間という恐ろしい長時間の割りに内容が希薄なのは、編集がどうしようもないから(笑)。
しかし、ときおり宮崎氏がポロッと漏らす本音はとても重要です。「僕はもう既成の起承転結のよくできたストーリーの映画なんか作りたくない」⇒開始早々近年の宮崎作品に関して核心をついた発言をされるのでびびってしまうのです。「昔のようなものを見たいなら、昔のやつを見てればいい。僕はそれと別はのものを作る。同じものを作って何の意味がある?」⇒これはずっと以前から言ってますね。
ともかく、ディレクターが宮崎氏に執着しすぎる余り、「映画の制作を追う」という視点が希薄になってしまっているのが惜しいと思いました。手描きならではのアニメーション技法がいっぱい詰まった映画なのですが、技術解説が全くありません。宮崎氏自身が描く原画⇒撮影⇒調整⇒彩色⇒完成フィルム、と順に追うシーンもあるのですが、どうもディレクターがアニメ知識皆無なようで、何の解説も入ってないのです。
あとこういう言い方はどうかと思うが、元気なうちに撮っておいてくれて良かった、とは思います。