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理系白書 この国を静かに支える人たち (講談社文庫)

価格: ¥600
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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内容に偏り有り。本気で読まないように注意しましょう。 ★★☆☆☆
シリーズ3まですべて読みました。確かにあるひとつの理系人の状況を伝えるという目的のためには良書といえます。しかし、(仕方がないことかもしれませんが)取り上げられている内容が恣意的です。理系の現場で働いている人達の現状は世界的に似たようなものです。内容評価は1巻が☆3、2巻が☆2、3巻が☆1.5です。
多角的な視点で日本の理系を分析する ★★★★☆
日本のいわゆる理系、特に研究職について、多角的な視点で調査を行い、現状や問題点を列挙し、様々な提言も試みている。

第1章が「文系の王国」。ある意味もっとも刺激的なデータが並ぶ章が最初に来ていてショックを受ける。次いで、「権利に目覚めた技術者たち」「博士ってなに?」「教育の現場から」「理系カルチャー」「女性研究者」「失敗に学ぶ」「変革を迫られる研究機関」「研究とカネ」「独創の方程式」「文理融合」という章立てが続く。

興味深い内容だった。特に、「トップ研究者に求められる資質は幅広い視野と、変化に対応できる柔軟性...(中略)...人材育成と並んで重要なのが、何が独創的かを見極める評価眼」というのは大いにうなずける。いわゆる漠然と語られる理系という言葉の意味と役割の重さを改めて考え直す機会になった。また、個人的には、ここで紹介される失敗も含めた様々な研究成果、例えばカーボンナノチューブで有名な飯島澄男研究員が実はフラーレンも先に見つけていたこととか、チューリングの波の仮説を40年ぶり生き返らせる研究を行った研究者の話とかが面白かった。また、いかにも日本らしい独自性を持った中小企業の「日本分光」「岡野工業」の話は、ちょっと胸を打たれた。

一方、本書で問題点と指摘されていることの中には、理系以前に文系も含めて日本全体の特性に由来するものも散見される。例えば、閉鎖的な面や縦割りな面は理系ということを離れたもっとマクロ的な視点でも考察すべきことだろう。また、本書には特にアメリカとの比較が頻繁に出てくるが、各国の研究における反面教師にすべき負の部分についてはあまり触れられてはいない。さらに、本書で扱う理系には、IT産業、特にソフトウェア産業はほとんど登場しない。多くの理系が従事している重要産業のひとつの筈なのに、このような本にも相手にされないところが日本がこの分野で弱い理由のひとつなのかもしれない。
技術立国日本のあやうさ ★★★★☆
 私はいわゆる文系であり、これまでの職場でも周囲には文系の人が大半だったので、これまで、理系の人たちについて考えることが少なかった。しかし、この本を読んで、(1)文系と理系では昇進面で差があること、(2)発明しても金銭面で報われないこと、(3)博士となっても生活が安定しないことなどは、とても深刻な問題だと思った。こんなことでは、優秀な人が理系に進まなくなり、技術を支える人材がやせ細っていくと感じた。

 また、話題としてはやや古いが、COEプログラム(トップ30)や研究費獲得の苦労など、大学に競争原理が持ち込まれてきていることの是非について改めて考えさせられた。他分野の成果主義でもそうだが、「目先の目標か、将来を見据えた高度な目標か」、「成果は誰が評価するのか、それは公正か」など難しい問題を内包している。

 いずれにせよ、この本を読むと、技術立国日本などとは言っていられない危機感を感じる。技術や科学について、そしてそれを支える研究者・技術者について、もっと関心を持たなければならないと感じました。
 後半はやや単調ですが、全体として読む価値のある良書と思います。
博士の悲惨な実態 ★★★★★
私は小学生の頃からずっと科学者に憧れ、大学でも理系を選択した。大学院修士課程に進学して、博士課程のあまりの酷さに言葉を失った。博士課程に進学した多くの学生の進路が決まっていないのである。俗に言う、高学歴ワーキングプアと呼ばれる現象である。それだけでなく、理系研究者は成果の割にはあまり高く評価されないという現状が明らかになりつつあり、理系を志望する学生が著しく低下しているというのだ。理系白書は、報われない理系研究者の実態を実例を交えながら詳細に追っている。博士課程に進学したいと思う学生は絶対に目を通しておくべきであろう。それだけでなく、理系に進学するかどうか迷っている高校生にも読んでもらいたい一冊だ。科学技術立国日本の将来を思うとやるせなさが残った。

他にお勧めの書籍を紹介しておきます。

学歴ロンダリング (光文社ペーパーバックスBusiness)

高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院 (光文社新書)

科学者たちの奇妙な日常 (日経プレミアシリーズ)
良質ジャーナリズムだが、「理学」よりかは「工学」へ偏り ★★★★☆
手に職がつくという意味では、安定したキャリアを持てると思われる理系だが、日本社会の実権は、現在でも文系人間に握られている。この事実を前提に理系社会固有の問題に目を向ける、大変良質なジャーナリズムだ。

貢献度に応じた報酬を貰えないことに疑問を持ち始めた、企業の雇われエンジニアたち。テーマの細分化で、より狭い分野へ収まってしまう傾向にある、研究者たち。未だになくならない理不尽な女性差別。受験教育中心主義の弊害。独創性を育てるのに適さない、昇進や研究費などにまつわる制度上の問題。そして、「文理分け」を前提とした社会の無意味さ、などを表に出す。日本の理系社会の抱えるさまざまな問題点には、より効率的なシステムを持つ米国の例と対比して、本質をわかりやすく抉り出す。

ただ、理系といっても、基礎研究からより実用的な工学系と、一括りに出来ない面をもつ。この著書に出てくる人達は、なんらかの形で「成功」した例が多いが、理系の前提となる研究というものは、基本的に失敗することもすごく多いし、良くても結果がペースの遅い日進月歩的に収まるだけ、という側面もある。日本のノーベル賞受賞者が多く輩出された時世もあってか、きらびやかな成功にスポットを当てるのもよいが、地道に開拓を続ける、「普通」の研究者たちにも取材を向けたら、さらに典型的な理系の実状に迫れたのではないか、とも思う。

産学提携は、社会全体にメリットがあるので、工学や、熱い注目を浴びるバイオ的な分野に興味が偏るのはしかたがないとしても、典型的な理系とは何のことなのか、という座標軸が、この作品ではやや一定ではないことは確か。

理系の「今」を概観するために、おすすめ。続編の『「理系」という生き方』を併せて読むと、「文理分け」にこだわることの理不尽さが、より分かるようになる。