ハバードと並べても遜色のないソリッドな吹け上がりに加え,卓越した作編曲力を併せ持った彼は,リーダー盤の仕立ても周到。いまいち決定打を欠くハバードより,余程評価されて然るべきだったが,彼はとにかく出てきたタイミングが悪かった。おまけに短命と来ている。ウィントン登場で生楽器が復権した頃には盛りを過ぎ,間もなく世を去ってしまった。可哀相に。
そんな彼も,1978年に大手コロムビアへ移籍。メジャー・デビューの機会を手にする。既に8枚を吹き込んでいたとはいえ,晴れてマイルスと同じ土俵に立てた喜びは容易に推察できよう。本盤はそのデビュー作を2作目をカップリングしたもの。ハープ,ローズに分厚い管陣営を加え,苦楽を共にした朋友たちと共同編曲。皆で凱歌を挙げた彼の気持ちはどんなに満たされていたことか。
音はいかにも1970年代の黒人主流派らしい怒濤のモード・ジャズ。ストラタ・イースト界隈黒人ジャズメンの姿をありあり想起させるエネルギー,最大15人が織りなすドラマチックな曲展開,そして達者な演奏力が高次元に融合。代表作『ステッピン・ストーンズ』とほぼ同時期だけに,全編に漲る勢いが素晴らしい。ちなみに標題の『ローズウッド』は,恐らく1923年にフロリダ州ローズウッドで起きた黒人虐殺事件のことを指していると思われる。解説を担当したM.カスクーナ(白人)が気づかぬ筈はないが,標題のゆえんには一切ノータッチ。どちら側にとっても,過去を超えるのは簡単なようでなかなか難しいものだ。