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日本語の歴史〈5〉近代語の流れ (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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日本語の歴史第五巻 ★★★★★
 第五巻「近代語の流れ」は、室町時代も半ばになって文献にあらわれる口語の文体に就いての分析から始まる。前巻で少し触れられていた口語、それは文語と対立するように用いだされた概念だが、現れ方は方言としてしかありえない、という視点から、はなしは上方方言と江戸方言の比較へと続いていく。各地の方言を比較して分析する際には語彙・文法などよりアクセントの違いが決定的な示唆を与えると著者は言い、僧侶が経典を読むときに用いるアクセント記号や、和歌を唱詠するときの記号、狂言の書に付いているアクセントの指示などに基づいてそれぞれの時代におけるアクセントの傾向を跡付けていく。音韻論は欧米の諸言語を研究・習得・比較するときにとても重要視されるが、日本の歴史的テキストの中に部分的にでも当時の音韻を辿り得るものがあるということは知らなかったし、その分析の手際のよさと、そこから見出されるアイディアは興味深い。

 第三章は、古代・中世前期には記録されることのなかった庶民の言語活動・言語生活について。忌詞や女房詞は、民俗学の本でよく記録されている事柄だが、こうやって「日本語の歴史」の流れの上で見ればまた違った見え方をしてくる。

 第四章は貞門・談林・蕉風と変化した俳諧と、古浄瑠璃・金平浄瑠璃から近松門左衛門が定着させる近世浄瑠璃、仮名草子の含んでいた談話調・舌耕の諸要素を総合した西鶴の浮世草子、芭蕉の確立した散文詩としての俳文が式亭三馬の「浮世風呂」などの戯作に利用されていく様子などが語られる。断片的にしか名を知らない日本史上の文筆の人々が、ことごとく先行する諸文献を総合・異化することで独自性を打ち立てている様子はこのシリーズ全体で反復して述べられていて、その意味での典型といえる章になっている。

 第五章は古代からの出版事情と、近世において出版界に一線を画する不可逆的な変化があったこと、教育に就いても同様の変化があったことが記される。現在では自明だと思っていることが、実は歴史的展開の末になった一つの状態でしかないことがよく分かる章。
 
 第六章は、契沖・賀茂真淵・本居宣長と続く国学の形成と完成を辿り、それらが国語学の面で果たした業績に就いて纏められている。学校はここら辺のことを詳しく教えてくれなかったな。多分に政治的な内容なので、一定の配慮が為されているのは自然なことだが。明治新政府の下で、死人が出るほど国学者と漢学者が対立した経緯は第六巻で語られている。

だんだんと、今の私たちに直接関わってくる内容になってきている一冊。