これも、素敵な詩歌に出会えます。
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前作もそうですが、未知の詩人、あるいは、名前だけは知っていても作品を読んではいない詩人の、勘所を押さえた詩歌に出会える本です。丁寧な、語りかける文章も魅力です。
今回は、土井晩翠、高知県の詩人大川宣純、加藤楸邨の「芹の根も棄てざりし妻と若かりき」という名句に出会えました。また、チャンドラーの『長いお別れ』に出て来る「さよならを言うのはわずかのあいだ死ぬことだ」や『狐物語』、『風とともに去りぬ』をめぐる翻訳に関する追求などもあります。
また、紹介されているエピソードでは、ドイツ文学者高橋義孝の、
大学一年の時、仏文科の鈴木信太郎助教授の「フランス語初級」の講義に出た。最初の時間に、指定されたフランス文法教科書を持って教室へ出かけたら、先生はその一時間で全フランス文法の講義を終えてしまって、次の時間からはいきなりボードレールの『パリの憂鬱』を読み始めたのには吃驚した。
が最高です。
あの手この手で、名歌・名句を紹介
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子供の頃に読んだ子供向けの三国志を枕にして、「ふける」という言葉をキーワードに、北方謙三、藤原定家、慈円、鴨長明と芋蔓式に語り継いでゆく手法は、落語っぽくて、提灯が必要なほど歌道に暗い私にも同感できる物がありました(地口落ちなんて、実のない話ですいません)。
戯れ言はさておき、「To say good-bye・・・」の項では綿密な、「泣いてはる」の項では大胆な仮説と、それぞれに楽しめて、歌で言葉を選ぶというのはこう言うことかと、歌道に暗い(もういいって)私にも納得できました。
引用の古文と語りの優しい口調の格差が何とも楽しい一冊です。
出会いの喜び
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ある文学作品をとりあげて・・・この場合は詩歌ですが・・・そこから芋づる式に次の詩歌や文学、書き手について話題が移っていく。 そういう本です。
作者の身の回りのできごとや子供時代の話しも織りまぜて、柔らかい、感じのよい文章で書かれています。
2巻目は1巻目よりももっと面白くてためになりました。
わたくし的に印象に残ったのは、三国志から藤原定家の和歌にたどりつく、「風更けて」についてと大川宣純という高知県の詩人を初めて知ったことです。
それから谷中安規という、版画家であり歌人であった人も初めて知りました。
すごいですよ、日本にはすごい人がたくさん居たんですね。