今作『Songs for the Deaf』では、主要メンバーであるニック・オリベッティ(ベース)とジョシュ・ホーム(ボーカル兼ギター)が絶妙のバランスで、シンプルなギターロックと複雑だけどやっぱり激しい、突風を巻き起こすかのような高速スピードロックを披露している。オープニングを飾るわずか90秒の「The Real Song for the Deaf」は、プールの底でレコーディングしたかのような、大胆かつとらえどころのないノイズ風エレクトロニカサウンド。そして2曲目はパワーコードの洪水と、おなじみのオリベッティの死の叫びで大爆発。まさにこれがアルバム全体に繰り返されるコンセプト、主張であり、バックでロスのラジオ局のようなごく普通のアナウンサーが、聞き飽きた心理療法用語を連発している。同じような偽の放送がところどころ挿入されているが、肝心の曲が良いのでさほど気にならない。生演奏によるパワーロックが中心で、変化が激しく妙なノリの「No One Knows」は大人向け「Monster Mash」といいった雰囲気。コーラスをフィーチャーした「The Sky Is Falling」はギターのバトルが始まるまでは夢心地のような気分にさせてくれる。詞がおもしろい隠しトラックの「Mosquito Song」はばかげた内輪ネタか、クイーンズの激しいサウンドに隠された音楽家としての主張といったところか。いずれにせよ、「Songs for the Deaf」を聴けば興奮すること間違いなし。実によくできたハードロック・アルバムで、聴いたら最後、みんなに言いふらしたくなる気持ちになるはず。それが彼らの狙いかも。(KIm Hughes, Amazon.com)