社会が葬り去りました。
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昭和50年代までは本書のような”世間”が都会・田舎問わず日本のどこにも存在した。その後なぜか急速にデオドラントな”社会”へと舵切りが進んでいく。ひと昔前までは世間体という言葉が聞かれたが昨今ではあまり耳にしない。なぜか?世間体をことさら良いものというわけではないが、それを気にした横のつながりはなくなり、変わって社会という組織力・権力を擁した縦のコミュニティーが良識やルールをことさら重視する良くいえば個人主義的な、自己責任に重きを置いた社会的組織へと個人が組み敷かれる方向へ変遷したからだ。そこでは組織の論理がはびこり、より多くの信頼を集めるモノへ信望が集まるようになる。ご近所同士に存在した信頼関係による絆や不文律は失われ、変わって権力のあるものが掌るルールを善しとする個の存在が”皆同じ”という縛りでもって社会がチューニングされていく。
著者はそのチューニングから発せられる絶えられないノイズから解き放たれたいという思いで本書を記したのだろう。
筆者も懐かしく読めた。