苦難にどう立ち向かうか?
★★★★★
時代は陽子が景王に即位した直後。
華々しく即位の儀が執り行われ、民たちの間には今度こそ良い時代がやってくるはずと喜びと期待が満ちている中、陽子は苦悩しています。短命の女王が続いたため官吏には「女王」に対する不信感があり、相手にされていない。唯一の拠り所の景麒は無口で無愛想、不満を顔に出してしまい陽子を不安がらせる。海客のため、国と政治の事がさっぱり分からない。。。まさに八方ふさがり。
ありきたりなファンタジーなら信頼できる仲間と有能な官吏が主を支えて協力して国を運営していくのでしょうが、作者は楽な道を与えてはくれません。「月の影〜」で友達になった楽俊は雁国の大学へ行ってしまったし、協力を得た延王・延麒はあくまで他国の王と宰相なので陽子に積極的な協力は出来ない。陽子は孤立無援の状態に置かれてしまいます。
「風の万里・黎明の空」は陽子だけでなく、長くなってしまうためくだりを割愛しますが海客の鈴と元・芳国公主の祥瓊の2人の少女が苦難を乗り越え、成長していく物語が展開されています。
陽子・鈴・祥瓊がどう行動し、それぞれの困難を乗り越えていくか?
自分に足りなかったもの、目をそらして見て来なかったもの、やる前にあきらめてしまった事・・・3人の歩んだ道を通して、はっと気付かされる事が多くありました。
自分の進む道に行き詰ってしまっている人に是非読んで頂きたいです。
ファンタジー嫌いの人、そしてファンタジー好きの人だからこそ
★★★★★
ファンタジーはどこか現実世界において感情移入するものがなければ本当の意味で楽しさは味わえないもの、というのが私の考えなのですが…
この作品は現実世界にも目を瞑りたい影の心理がリアルに描かれている作品の一つ。
なによりこの「風の万里〜」は人が持つ「地位、名声」が他人にどれだけそこへの「期待」「妄想」「嫉妬」といった感情を抱かせるかをテーマにしていると思う。
「実際になってみて違う―、実際会ってみて違う―」よく世間で人と出会えば起こりうることだ。そのギャップを知り、自分の甘さを知り成長していく陽子、鈴、ショウケイの三人の成長ぶりは今でも好きだ。
高校時代はこの本を読んで、ざくざく心の弱さにしみた憶えがある。
ファンタジーなのに現実をがんばってみよう!って思わせてくれる素敵な作品でした。
そんな意味で、これが十二国記の中でも一番好きな理由です。
おすすめです
★★★★★
シリーズ4作目にして1作目で陽子が玉座に着いたその後の物語。
慶国玉座につきながらも、「こちら」の世界がわからない陽子。
何を聞かれても、何が最善かがわからず、回りからはため息をつかれ
自信もなく、苦悩する。
崖から足を踏み外し、虚海に落ち「こちら」の世界の才国にきてしまった鈴。
言葉も通じない、もとの世界にももどれない、自分以上に不幸な子はいない、
誰も私をわかってくれない。と、
周りのことを、みようともしない。
芳国国王の娘に生まれた祥瓊。
王と王后に溺愛され後宮奥深くに隠され、幸せにくるまれて世間もそのようだと思っていた。
目の前で両親を殺され、身分を剥奪されるまで国王が何をしていたのか、国の中がどのようなものだったのかがわからなかった。
わかってからも、自分は何も悪くない。と、すべて何事も人のせいにしつづける。
同じ年頃の少女たちの物語が交差して進んでいく。
350ページ近くもある上巻の中で
少しずつ変化を見せる鈴と祥瓊。
この2人が陽子とどう繋がるのか。
3人の物語は繋がりそうでまだ繋がらない。
分厚さも気にならないくらい面白い。
かえって、その厚さがうれしいくらい面白い。
十二国記シリーズは、ヒトとして大事なものを教えてくれる気がする
★★★★☆
な、ながっ!。上下巻合わせて700ページはゆうにあるから(笑)
今回は、陽子の統べる慶国がまだまだ「カタチ」にさえなっていない時期の話です。
主人公は、陽子を含めた3人の少女。
鈴-----蓬莱にて、家が貧しく親に売られた娘。
売られる屋敷に行く途中、突然の嵐で虚海に落ち「あちら側」へ行く。
翠微洞の梨耀に拾われ、下僕となる。
祥瓊----十二国のひとつ芳国、峯王・仲韃の娘で公主。
過酷なる法によって民を苦しめ、天命を失くした峯王・仲韃を目の前で月渓に殺される。
祥瓊は殺されずにすむが、芳国民の元へ素性を隠し、おろされる。
陽子----天命を受け、慶国の女王となったはいいが、陽子が女王となる前に国を
荒れさせたのも女王だったという過去で、民の信頼が得られない。
且つ、海客ゆえに「こちら」の様々なことがわからない事が、更に側近達のため息を増やす。
簡単に、簡単に言ってしまえば、3人の娘達の生い立ちはこんな感じ。
ただし、上巻300ページ以上使っても3人は 「まだ出会っていない」 。
それぞれの「願い」は、本当に正しいものなのか?
果たすべき責務を理解していない幼き少女たち。
幾人かの大人がそれとなく教えようとするが、わからない。
現実世界もこんな感じだな……と思った。
社会に出たら、オブラートに包み「自分で理解させよう」とする。
大人になるために必要な心構えややり方は、学校のように教えてはくれない。
でも、そうやって大人になるものなんだよな……。
人それぞれの迷い方。
★★★★★
前半は景王・陽子を含めた3人の少女が出会うまでの道のりを書いてます。
王になり民を先導していかなければいけないが官吏にも小馬鹿にされままならない陽子、海客で虐げられ続けられる鈴、公主の立場から一転どん底に突き落とされた祥瓊、、、一見可哀想と思えるのですが実はそうではなく共通していることは「知らないからやらなかった。」「わからなかったからやらなかった」で済まそうとしていることです。それが如実にでているので「月の影」の前半の陽子が3倍になったようですごくイライラされました。陽子はそれでも経験があるのでいち早く気付き慶の実情を知ろうとしたのでまだましなほうですが、、。
知らなければ知ろうという心は彼女達の心に芽生えなく取り返しのつかないことが起こるまで気付かないのはなんとも愚かだと思います。現実世界にも少なからず彼女達のような人間はいるので彼女達の言い訳がましさ、エンホの教え、などを読んでいると何となく身をあらためさせられるようです。