不況も政党政治の混迷もすべて過去に例がある
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バブル、不況、デフレ、政党の腐敗、スキャンダルによる不毛な足の引っ張り合い、このような問題は現代日本だけが抱える問題ではない。世界史に目を向ければ、大抵のことは似た事例が見つかる。もちろん状況が全く同じわけではないので、解決法も異なる。しかし、それらの問題を人間は乗り越えてきたのである。歴史に学び、建設的に行こうではないか。
そんな気分で読めるし、多分、著者もそう思いながら書いたのであろう。
主としてオランダのチューリップバブル、英国の南海会社バブル、英国議会制度の混乱、日本の明治・大正・昭和初期の政治の混乱を描く。それは、まるで2010年現在の状況を言っているようでもあるし、執筆当時1990年代初めごろの出来事とも当然かぶってくる。
世代を重ねれば人間の精神が理性的に発展するワケがない。今も昔も同じようなことを繰り返しているのだ。
歴史の本としてじっくり読んでも良いし、もともと連載物なので細かい区切りごとにちょっとずつ読んでも楽しめる。
エッセイ集だが決して軽くはない
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この本は新潮社の月刊誌「FORESIGHT」誌上に1991年1月号より1994年11月号まで連載されたものをまとめたものであるが、著者が96年5月に急逝してしまったので、当時京都大学助教授であった中西寛氏の協力を得て校訂され、96年11月に出版された。
話の一つ一つは大体5ページで完結しているが、後半は「バブルで亡んだ国はない」「政治の良し悪し・近代初期イギリスの政治から」「日本政治史から考える」というテーマで一連の続きものになっている。
登場人物を拾い上げていくと前半だけでも、ロシア皇帝アレキサンダー1世、ヒトラー配下の軍需相シュペール、ワイマール共和国外相シュトレーゼマン、アメリカの戦略家マハン、田沼意次、陸奥宗光、山梨勝之進、石原莞爾と多彩で、内容の深さと面白さは今も変わらない。
著者は京都大学教授でありながらざっくばらんで、晩年はTVの「サンデープロジェクト」のコメンテーターとして出演し、独特の語り口で好評を博した。急逝されたのが惜しまれる。
読めば、読むほどに
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短い評論をまとめた体裁の本である。
ただ、中心部分はシリーズものになっており、表題にいうごとく、世界史から取材している。
当時の世相を繁栄して、バブルについて語っている。いわく、成長期の国がバブルを起こす。貯蓄が厚いからバブルが起きる。だからバブルがその国の命取りになることは、まれである・・云々。
ほかにも、イギリスの18世紀を検証しつつ、よい政治についての考察も語られる。いわく、偉大な政治家や良い政治なしで済むことの方が幸せではないか。ナルーやチトーが偉大であったとして、彼らの国は長く苦しんでいるではないか。
私はすでに何回も本書を読み返しているが、年をとり、歴史を知るにつれて、著者の言っている事の深みが理解できる気がする。