まず多くの「金持ち本」同様、億万長者になるために必要な知恵や経済観念、身につけるべき習慣が論じられている。その主旨は、1日1ドルの投資、1セント単位の支出の把握や削減といった地道な努力が結果として実を結ぶというもの。加えて収入面では、複数の収入の流れをつくり、利子、印税、コミッション、賃料収入といった「一生型収入」を得ることを必須としている。容易ではないが、大きく稼ぐには妥当な筋道といえよう。
肝心の億万長者になる方法については3分野が挙げられている。その1つ「株式投資」では、金融商品の種類や売買のタイミングなどが論じられている。内容は投資関連の本などでよく語られているもので、それほど新鮮味は感じられない。2つ目は著者の専門分野である「不動産」で、格安不動産を見つける方法や頭金をゼロにして購入するテクニック、転売で稼ぐ方法などが披露されている。日本の不動産事情も考慮する必要がありそうだが、そのゲリラ的なノウハウにはただ敬服する。3つ目が「マーケティング」で、マルチ商法や自費出版、各種情報コンテンツの販売、ライセンスビジネス、インターネット販売などが論じられている。知的財産の販売が中心であるが、その価値を引き出すマーケティング手法にヒントが詰まっている。
億万長者になる直接の方法ではないもの、特定のスキルを要するもの、日本の事情とは異なるものなどもあり、即実践できる項目は多くない。ただ、大金を稼ぐためのアイデアは確実に学べる。また、身の丈から始めるビジネスの可能性が幅広く検討されていて、フリーの在宅ビジネスを手がける人には刺激になるはずだ。とにかく試すことでしか、真価のわからぬ1冊である。(棚上 勉)