さて我らがせつらくんの初登場作品だ。実に初々しくそしてハードボイルドな彼に会える本書。黒衣でない彼に会えるのもこの作品。魔界都市ブルース・ファンを自称するならば必読。世にも美しきマン・サーチャーの活躍を脳裏に焼き付けよう。『僕』と『私』の初降臨を目撃せよ。魔界都市・新宿も本領を発揮し始めている。まさに魔界の様相を呈している。これが【魔界都市・新宿】とその住人の真の姿だ。

作者が今日に渡って書き続けている「魔界都市＜新宿＞」を確固たるものとした、記念碑的作品がこれです。＜新宿＞を舞台とした物語は数多く発表されていますが、やはり一番人気はこの魔界都市ブルースであり、主人公の秋せつらでしょう。その彼の初めての活躍が、まさにこの短編集です。
あえて指摘するなら、初期の作品ゆえか主人公のイメージが定まっていない部分が見受けられます。最近の作品から入られた方は、やや違和感を覚えるかもしれません。
しかし、妖糸を振るう二重人格の「非情の魔人」というコンセプトはしっかり発揮されていますので、面白さは保証します。