ジェイガー作曲の「シンフォニア・ノビリッシマ」は、30年ほど前よく聴きましたので、本当に懐かしかったですね。名曲だと思います。風格もあり、メリハリもあり、ウインド・オーケストラ特有の部厚い密集和音の充実ぶりは、今聴いても感動します。
ホルストの代表的名曲「吹奏楽のための第1組曲変ホ長調」はお手本のような演奏でした。パート・バランスも、しっかりしていますし、とてもよく鳴っています。特に木管の温かくて柔らかいサウンドに聞き惚れました。ウインド・オーケストラ特有の部厚いハーモニーは、音楽が進むにつれ万華鏡のように変化していきます。若さ溢れる演奏者集団ですので、佐渡裕のめざす音楽性ととても相性が良い感じがしました。
東海林修作曲の『ディスコ・キッド』も、リズム感と歯切れがよく、破綻のない立派な音楽でした。シエナ・ウインド・オーケストラのメンバーの能力の高さを如何なく発揮した録音でした。このようなジャズ・テイストの曲は、佐渡裕の個性とマッチし、躍動感に溢れ、歯切れが良く、明るい音色を伴っており、好感を持ちました。大きな音楽の捉え方や、音楽のうねりを至る所に感じる演奏に仕上がっていました。
ルディン作曲の「詩のない歌」が一番心に残りました。
1997年に作曲され、国内新録音ということで、初めて聴きましたが、素晴らしい曲ですね。曲全体に感じることができる抒情性と神秘性は、従来の吹奏楽の楽曲にない親しみやすさと格調の高さを感じました。管楽器特有の濃厚なハーモニーがとても懐かしい響きを思い起こさせます。感情の高ぶりを抑えた佐渡のタクトにシエナがよくついていっています。
選曲でいえば、第3作が一番「万人受け」するのではないでしょうか。本当に素晴らしい演奏でした。