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江戸の本屋さん―近世文化史の側面 (平凡社ライブラリー)

価格: ¥1,365
カテゴリ: 単行本
ブランド: 平凡社
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江戸時代を理解するために ★★★★★
江戸時代の出版事情についてまとめられている。
なかでも、『解体新書』を含め多数の蘭学にかかわる書物を刊行した書肆・須原屋市兵衞について詳しいのが嬉しい。解説では、その問題点を指摘されているが、同時期の書肆・蔦屋重三郎に比べて知る人が圧倒的に少ない須原屋市兵衞について、多くの人が知るきっかけになればと思う。
近年、江戸の出版・読書事情について『江戸時代の読書熱』など、多様な研究が発表されているが、その基本として本書を欠かすことはできないだろう。
出版業界から見た近世の世相 ★★★★★
日本の江戸文化の重要な要素として本があるが、出版事情から江戸文化と政治を読み解こうとするものである。著作権のような権利や、一方では貸し本屋と地方の娯楽、発禁処分本、外交秘に関わる本の出版など、江戸時代はかなり自由に情報がいきわたっていたようだ。
明治政府以降、教科書で江戸時代の暗い側面が強調されてきたが、実際にはかなり違う事が良く分かる。
「江戸時代」の出版事情を知る ★★★★☆
 本書は、1977年にNHKブックスとして刊行されたものを平凡社ライブラリーで再刊されたものである。興味はあったものの、入手が難しかったので、今回の再刊は喜ばしい限りである。寛文から元禄にいたる二十年間に出版物が激増し、元禄時代の流通冊数はおよそ一千万冊に及び、その後も増加していったという。その原因を十七世紀初頭以来、日本の社会的コミュニケーションの特質が大きく変化したとみている。そこで、それを考えるには当時の出版を担った書物屋の様子を明らかにすること(本書6‐7頁)が本書の目的である。
 
 最初に京都の出版情勢について述べられており、概して学術中心の本を扱い、幕府、大寺院や大名・上級文化人のような社会的地位の高い人々を主に販売対象としていた。しかし、元禄時代の大阪では、「庶民」の中では上層であるが、世間一般の読書層を得意先としたのである。そして舞台は江戸に移り、その時代では「元禄時代」「田沼時代」、「化政時代」と「幕末」の出版状況について触れられている。

 特に印象的だったのが、貸本屋の活動である。江戸時代にたくさんの書物が売り出されたものの、当時の本は高価なため普通の庶民にとっては高嶺の花であった。そこに、貸本屋としての生業が成立したのである。貸本屋は店に座って客を待つのではなく、大風呂敷に包んだ書物を背負って得意先を回って営業をしていたようだ。また、普通の貸本屋でお得意先が百七八軒ほど、江戸だけで十万軒に及ぶ大勢の貸本読者がいたそうだ(192頁)。さらに、後には貸本屋にも出版・言論統制による「規制」がかかるものの、その中でしぶとく活動した貸本屋の存在によって、庶民レベルにおける社会的コミュニケーションが確保された。つまり、正式出版業を出版コミュニケーションの表街道だとすれば、貸本業を「裏道コミュニケーション」と本書では表現されている(202頁)ところは、興味深かった。