そんな本書は真面目な読者に叩かれた。掲載誌の週刊金曜日では抗議の意味で定期購読を中止してしまった人までいたとか。それでも「テロリストに希望はない。希望がないから、テロに走るのである」という本書の問題提起は、単なる有害図書として片付けてしまうには重すぎると私は思う。著者があとがきで告白している無力感と、小説全体を貫くシュールなリアルさは、実は表裏一体だ。なぜなら「失業革命家」が『不朽の自己責任』作戦で「われらがシンちゃんのおわす(もっとも、ほとんど不在だそうだが)都庁」を爆破しようとする小説の不謹慎さも、1日に100人の自殺者と1人あたり1000万の借金を生み出している日本の現実という不謹慎さの前には軽く「負け組」となってしまうから。
本書は誰でも作れるテロリストのレシピだ。あなたが気づかないうちに作っているその料理の、あなたに気づかれないうちに作られているその料理の、正体をこの本で確かめてみてください。