Live at the El Mocambo [DVD] [Import]
価格: ¥1,193
テキサスのブルースマン、スティーヴィー・レイ・ヴォーンが長年のドラッグ地獄から立ち直ったのは1990年。その前年に発表された『In Step』は、彼がドラッグなしで作り上げた初めてのアルバムで、驚くべき完成度を誇っていた。ところが彼は、それから間もなくして、バディ・ガイ、ロバート・クレイ、エリック・クラプトンとステージで共演した後に、シカゴ行きのヘリコプターに乗り込んだ。そしてヘリコプターは墜落し、ひとりの偉大なブルース・ギタリストのキャリアに幕が下りたのである。
さて、1983年まで時代をさかのぼろう。スティーヴィー・レイの名が売れ始めた時期だ。彼のバック・バンドであるダブル・トラブルと共にレコーディングしたファースト・アルバム『Texas Flood』が少し前にリリースされ、批評家と大衆の称賛を浴びていた。会場はトロントのエル・モカンボ・クラブ。薄暗く、タバコの煙が立ちこめる、気取らない雰囲気のナイト・クラブだが、耳の肥えた常連客が集まってくる。小さなステージに立っているのは、ヴォーン、ドラマーのクリス・レイトン、ベーシストのトミー・シャノン。ギターを持ったヴォーンは、トレードマークの帽子とワニ皮のブーツに身を包み、熱気と激しい運動量のために汗を浮かべている。肉体的にはシャノンよりずっと小さく、はるか上から見下ろされているという感じだ。しかし、場をさらうのはヴォーンである。これは、ギターの腕前もさることながら、彼の華やかなパーソナリティによるところが大きい。それに、演奏自体が見事だ。最初は火花のように激しく、続いてファンキーに、そしてクールで目をみはるほど優美に、と様々な表情を見せるのだ。彼の音楽からは、生きることの苦しさに囚われた真のブルース・アーティストの姿が伝わってくる。
彼のキャリアの初期にあたるこのライヴでは、まだジミ・ヘンドリックスの影響が濃厚だ(フラワー・パワーのシャツもその証拠)。そのため、「Voodoo Chile」や「Third Stone from the Sun」のカバーが登場する。後者における縦横無尽なギターは、まさにヘンドリックスばりと言える。だが、本作のハイライトはヴォーンの演奏する「Texas Flood」だ。聴いていると、ブルース・ギターの演奏技術の限界に挑んだ驚異的名演であることが分かってくる。本作は、一度きりのイベントを生々しく、詳細に、熱意をもって記録している。これをフィルムに残そうと考えた人々の先見性に、すべてのブルース・ファンが感謝することだろう。(Mark Walker, Amazon.com)