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とせい (中公文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論新社
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会社にやくざがやってきた!(しかも社長として) ★★★★☆
 「素人さんに迷惑かけちゃいけない」が信条の昔気質のやくざが、どういうわけだか潰れかけた小さな出版社の再建を引き受ける。出版不況で青息吐息の出版社だが、社長と役員になったやくざたちは物怖じしない素人の率直な意見とフットワーク、裏社会に精通した情報力とコネクションを使って、すっかり元気を失っていた出版社を立ち直らせてしまう。だがこれを面白く思わないのが、暴力団潰しに躍起になっている警察だった……。

 漫画サンデーに連載されている「とせい〜任侠書房」の第1巻をコンビニで少し立ち読みして面白かったので、話の続きを知りたくて原作を読んでみた。コミック版は原作のエピソードを少しアレンジしたり、順序を少し変えたりはしているがほぼ原作通りの展開。しかしある面では原作以上に面白い部分もあり、コミック化としては成功しているものだと思う。特に人物のキャラクターはコミック版の方が掘り下げられているのではないだろうか。原作はストーリーが先走りして人物造形が後追いになっている部分もあるが、コミック版はまず「絵」で人間を描けてしまう強みがある。ただしこれは、先にコミック版を見てその印象に引っ張られている可能性もある。

 著者の今野敏はテレビドラマ「ハンチョウ 〜神南署安積班〜」の原作者だそうだが、僕はこのドラマも見ていないのでまったく知らなかった。小説家として多くの著書を出しているが、映像化されたものはあまり多くない。この「とせい」もVシネになっていておかしくない内容だと思うが、まったく手つかずのようだ。最後は少し派手なアクションシーンもあるし、映像作品向けだと思うのだけれど……。
現代人が忘れた大切な物を教えてくれます ★★★★★
堅気からは嫌われるヤクザ。その本質は義理人情に熱く、必ず落とし前をつけさせる。間違った事でも必ず筋を通す。
上が黒と言ったら黒。堅気には迷惑をかけない・・・。現実味はないとはいえ、現代人のモラル・マナーを見てると、
この小説の中のヤクザの方がよっぽど礼儀正しく生きている思うし、教えられる事が数多く出てくる。
まず行動する、お願い毎には必ず顔を合わせて礼をつくすなど、ビジネスでも当然、でも最近は忘れられてる事が書
かれており、若頭の日村は中間管理職における星だ。上の命令は絶対、下への気遣いも忘れない。
現実世界ではありえないが、この本を読むと、小説っていいものだなあと気づかされる。
続編の任侠学園とセットで読む事をおすすめします。必ず1日1冊で読めるでしょう。
痛快!の一言につきる ★★★★★
ヤクザが倒産寸前の出版社の社長に・・・一見ミスマッチだが、互いの足りないところを補い合って見事に息を吹き返していく出版社。荒唐無稽な設定で何のリアリティもないけど(笑)これぞ小説の醍醐味だな〜と思いました。主人公のナンバー2がとても魅力あふれる感じで、シリーズ化やドラマ化しても面白くなるんじゃないかと思います。
こういうの好きです。 ★★★★★
今ではほとんど聞き慣れない仁義。
今野氏の作品は好きで読んでいましたが、このシリーズは初めてでした。
どこか憎めない親分と律儀で真面目な若頭、、、周りに集まる今時の事情を抱えた若い衆、
読み終えた後、新作の任侠学園を読もうと思いさせる、とせいでした。
幸運に恵まれすぎでも面白い ★★★★★
 畑違いの出版社をヤクザが見事に立ち直らせるサクセスストーリー。運に恵まれて、雑誌の売り上げは好調、所轄のマル暴の刑事や地元の暴力団との軋轢も最後には丸く収まる。ご都合主義の小説のようだが、それを感じさせない筆の勢いがある。昔の仁侠映画のような台詞も、滑稽なようでありながら、なぜか泣かせる。やってることにリアリズムはないし、現実にはこんなヤクザは存在しないのだろう。こうも簡単にとんとん拍子に都合よく行く筈がない。でもこんな人たちが本当にいたら応援したくなる、うまくいってくれと願わずにはいられない、そんな暖かさが感じられる。3年ぶり読み直してみたが、やはり面白いのは、構成が上手いのと、代貸の日村誠司が魅力的だからだろう。
 理屈抜き愉しめる方、リアリティを追求しない方なら読んで損はない。