最後のインタビューで全て納得…
★★★★☆
ブダペスト・フィルとの共演から西本智実さんのファンになり、これまでのディスコグラフィを少しずつ聴き始めている。拠点であるロシアのみならずフランス音楽に冴えを見せる彼女には「幻想交響曲」が最適では?と思いAmazonさんで探してみると既にDVDで出ていることを知り、即購入。演奏は…残念ながら彼女のベストとは到底言えない出来。伝統あるオケの音自体は悪くはないが、全体にオケメンバーは淡々と演奏しているといった風情で、求心力も集中力も演奏の一体感も今一つ。細かなアンサンブルのずれ、表現の食い違い、バランスの調整不足(特に金管の吹き方や音量がはまっていない)も見られる。それに対して西本さんが強引に引っ張っていこうというような様子もなく、西本さん自身が戸惑い、諦めながら振っているように見える。…こうした演奏になってしまった訳は、演奏の後に聞ける「特別映像インタビュー」の後半で垣間見える。「チェコの演奏スタイルを動かす」ため、「ギリギリの音楽」の「ギリギリの表現」のための「コミュニケーション」に苦労したものの、彼女にとっての「音楽の国境」は高くてまだまだ越えられなかった…という訳だ。彼女の今回の演奏への無念さが伝わってくる。でもいいではないか。自らの拠点ロシアから長い音楽の伝統のあるヨーロッパへの進出、つまりロシアの指揮者から世界に認められる指揮者になるための西本さんの挑戦はまだまだ始まったばかり。生半可な苦労ではないはずだ。その一つの過程として聴く価値はある。オケメンの間を歩いていく彼女の小柄な姿を見ると、あらためて世界の音楽界に挑む西本さんに「頑張れ!」とエールを送りたくなった。指揮者としての統率力は☆2、オケの演奏は☆3ですが、今後への期待を込めて☆4とします。
一見さんお断り、の老舗オーケストラ
★★★☆☆
オーケストラの演奏自体は質の高いものです。
音がぴったりとそろっていて、どのパートも極上の音質で奏でています。
ただ・・・西本さんの指揮をまったくもって無視しているのが鼻につくところです。
指揮者の面目だけ、表面上は保たれるように、テンポが多少遅れながらもぴったりと
距離を保ちながらついていっています。
なんだか、意地悪で居心地が悪い、というのが感想です。
この曲目は、ここのオーケストラの十八番なんでしょうか。確固とした解釈があって、
一歩もゆずるもんか、とばかりに険高く、驕りたかぶるようにキンキンと歌い上げる様子が
あからさまに見て取れます。
悔しいかな、その解釈はそれほど、この曲とずれてはいません。
西本さんには、ただただ、お疲れ様でした、と言葉をかけたくなります。
最後のインタビュー映像で西本さんが語っておられた言葉が印象的でした。
「音楽に国境はないというけれど、やはり国境はある。それを超えてこそ国境がなくなるんだと思う。」と。
今(2007以降)はドイツを拠点に活動なさっているようです。
今後行く先々で、違った難しさがあるのだと思います。
それを試行錯誤しながら乗り越えていかれる西本さんであらんことを期待します。
臨場感に乏しいカメラワーク‥!
★★★☆☆
西本氏の得意なロシア音楽ではなく、イタリアのヴェルディとフランスのベルリオーズの作品を演奏し、しかも普段のロシアのオケではなくチェコのオケとの共演が聴ける‥という事で、西本氏の大ファンの私としては嫌でも手にしたくなるライヴ収録DVDだが…。 まず、カメラワークにセンスがない‥!演奏会場の制約もあるだろうが、もう少し撮影に工夫が欲しい。指揮者とコンマスのバストアップ、オケを少し遠目から引いて撮影した映像、ところどころにオケのソロ奏者のアップ映像…この繰り返し! カメラの設置台数を少し増やして鑑賞者を飽きさせない工夫が撮影スタッフに必要かと…。西本氏のライヴ収録DVDは他にもいくつか出ているが、その中でも最も臨場感に乏しい!チャイコフスキーの第五と悲愴交響曲のライヴDVDは演奏会場の臨場感、西本氏とオケ、観客席との緊張感が良く捉えられていてスゴく良かったのに‥! 演奏の方は西本氏がアツい指揮振りでチェコのオケを良く鳴らし、なかなかの名演。 特にヴェルディはオケも西本氏の指揮に良く反応しており迫力ある演奏が聴ける。ベルリオーズはヴェルディとは逆にオケのデリケートな精度にいささか物足りないところがある(‥特に第三楽章) 普段、愛聴しているデュトワのCDに較べると、この若いチェコのオケは響きが少し大味だ! これがチェコ・フィルだったら、あと少しスマートで洗練された演奏が出来たかも‥。 曲目も少なく、特典映像も短い西本氏のインタビューだけだが、西本氏の貴重なレパートリーのライヴ映像なので彼女のファンなら結構、楽しめるかも知れませんね‥。
指揮者とコンマスの映像ばっかり
★★★☆☆
指揮者とコンサートマスターの映像ばかり撮影されています。コントラバスやチェロなどは非常に、・・・というか殆ど映像には出てきません。あとオーケストラ全体を客席から引いてみる映像も多く、撮影の仕方に疑問が残ります。指揮者は淡々と指揮をしており、特定の奏者に指示を出しているシーンも少なく、長く画面に映っている割には、見栄えがしません。演奏は悪くなく、一定の水準に達していると思います。音も合っており、変な音も出ていませんが、鐘の音が<NHK 昼ののど自慢大会>で使われるような鐘で、まったく重厚さがなく、曲と激しく合っていません。幻想のDVDとしてはガーディナーの指揮のDVDの方が、演奏内容や撮影技術とも、良いように思いますが、この方のファンであるなら買っても良いかと思います。最後に指揮者の方のインタビューが収録されています。