アメリカのキリスト教を理解するために
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「宗教右派」の政治的影響力によっても知られるように、現代のアメリカにおいてもキリスト教の影響力には大きなものがあります。本書はその成り立ちを、植民地時代から現在までの通史として論じるものです。
アメリカ独特のプロテスタント信仰の中から、政教分離や信教の自由がどの様に発展してきたのか、モルモン教やエホバの証人といった「異端的」な宗派の役割も含めて広く論じられています。
全体で12章のうち11章までが、植民地時代から第2次大戦に当てられており、過去の歴史的展開を論ずることに重きが置かれています。戦後から現在の状況については、概観するにとどまりますが、こちらには多くの文献があるのでそちらを参考にすれば良いのでしょう。
また、ネイティブ・アメリカン、黒人、女性、さらには同性愛者などについても、どの様な人々が権利の拡張に努め、各教会がどの様に対応した来たかという、マイノリティとキリスト教という点にも度々スポットを当てているのも、本書の大きな特徴です。
扇情的な内容でアメリカのキリスト教を論ずる書籍が目に付く中、底流からアメリカのキリスト教を理解するために、貴重な著書だと思います。