著者名を見たときには「アダルト・チルドレンの事例が延々と続く本だったら
すぐに読むのをやめよう」と半身の構えで読み始めました。
しかし予想はよいほうに裏切られました。著者は治療者として過ごした四半世紀を振り返り、その総括を行なおうとしています。彼女の感性や語法に違和感を感じる人がいたとしても、終章に近づくに連れ、思考の深度が深く、射程が
遠くへ達する進化を感じ取るのではないでしょうか。
また平易な語法で語られる言葉の中に、時折治療上すぐに役立つ金言が見受けられます。たとえば「自責感」について述べられた次の言葉。
快はそれへの禁止が強ければ強いほどより強烈に感じられるのだ。禁止は他者からはもちろん、自分で自分に対する禁止もある。「いけないと思うけどやってしまう」ほうが、許容された行動よりも快感は強いのである。
臨床心理専攻の大学院生には常識と思いますが、一般向けの啓蒙書でこのように細かく指導してもらえるのは、ありがたいことです。