壮大な設定、深遠な問いかけなどを用意したSFらしいSFは、
好きになればとことんはまれるかわり、
敷居が高く感じられることもあるものです。
この短編集は、そんなSF小説の主流からははずれて、
ひょんなことから日常生活がちょっとヘンになる物語が多めです。
何かに似ているとおもっていたのですが、やっと発見。
「ドラえもん」に似ているのです。
「ドラえもん」をはじめ藤子不二雄の世界は、現代の庶民の生活に、
S(すこし)F(ふしぎな)エッセンスが振りかけられています。
表題作の「ふたりジャネット」をはじめ。読者が気負わずに読める、
すこしの不思議がたっぷりと詰まった本です。
巻末にまとめてある、「万能中国人 ウィルスン・ウー」シリーズは、
やはり、本格SF好きにとっては異端の作品群です。
「宇宙の膨張はいずれ止まって、こんどは時間が逆に流れる」などの
ちゃんとした科学理論がストーリーに応用されているのだけれど、
これがまたおかしな笑える方向にばかり適用されているので大笑い。
科学者のウーが、難解な数式をつらつら書いて説明するシーンも
何度かあるのですが、この場合の数式は、理論的に正しいとかどうとか、
そういう疑問はうっちゃって、「ワハハハハ」と読み飛ばすためにあるようなものです。
そして、宇宙の危機の救い方やら何やらも、どこかマヌケで庶民的です。