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ふたりジャネット (奇想コレクション)

価格: ¥1,995
カテゴリ: 単行本
ブランド: 河出書房新社
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静かだが忘れがたい作品集 ★★★★☆
特に気に入ったのが、ラスト三編の『万能中国人ウィルスン・ウー』シリーズだ。これは、話の展開の未知数も手伝ってか、とてもおもしろかった。バカバカしいユーモアもよかった。
表題作にもなってる「ふたりジャネット」は、本好きには馴染みの作家たちが多数登場、それだけでも楽しいが結局何がどうなったのかよくまとまっていないところがミソ。適度の翻弄と潔さが心地いい作品。
とてもウケたのがショートショートの「アンを押してください」。これぞシットコムのおもしろさというものだ。とぼけた雰囲気が最高。気の利いた小品だった。
ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞と各賞を総ナメにした「熊が火を発見する」は、ペーソス溢れた佳品。火のはぜるパチパチしか聞こえない静かな作品で、静謐なのにイメージの強烈さが後を引く稀有な作品。この感覚は読んでみなければわかりません。
これと同列なのが「英国航行中」。こちらも静けさと侘しさに満ちて奇想世界を彩っている。
転じて「未来からきたふたり組」は、とても楽しいコメディ。名づけるならロマンティックタイムパラドックス物とでもいおうか。なんだ、そのまんまじゃん^^。
「冥界飛行士」は、この短編集のなかで唯一ダークな作品。臨死体験を絵にするなんて。すごく生々しくて不気味だった。でも、そこに美と哀愁が漂うところがこの作家の面目躍如といったところか。

幅広い短編集 ★★★★☆
とにかく「熊が火を発見する」「ふたりジャネット」が秀逸。短い話なのでさっと読めてしまいますが、ゆっくり読むと深い余韻が広がります。大きな事件がおきないように見えて、物語の最後で登場人物の何かが変化している構成は、SFという枠に収まらない広がりを持っています。この2編は何度も読むことをおすすめします。
また、まったく毛色の違うスラップスティック全開の<万能中国人ウィルスン・ウー>3部作が1冊に収まっているところに、作者の懐深さを感じます。
ユーモアファンタジー ★★★★★
 SFと呼ぶと、いろんな人に叱られそうな小説群。テリー・ビッスンはSFを書きたいのではなく、ユーモア小説を書きたかったのだろう。ただ、「熊が火を発見する」や「ふたりジャネット」に流れる純文学性は、奥深い。オチのない興趣深さがある。「ふたりジャネット」なんて、翻訳されてさえ、言葉の面白さや機知を感じる。
 万能中国人「ウー」のシリーズは、ただただ痛快。ホンコン映画を見ているみたい。ブルース・ウィルスとジャッキー・チェンの共演映画をイメージしたら、ものすごく楽しめました。やっぱ「ウー」最高。
素晴らしい ★★★★☆
 全然何でもない話なのに、何故か読ませてくれる。
 端的に言ってしまえば、くまが火を発見するは熊が焚き火するだけの話であり、ふたりジャネットはアップダイクやサリンジャーなどの名のある作家が田舎町に次々引っ越してくるだけの話、アンを押してくださいなんて、キャッシュディスペンサーを操作するだけの話。
 それなのに、とぼけた味わいが絶妙に配置されていて、天性のセンスを感じる。合間にあるユーモアの含まれた文章も絶妙であり、それウーの連作に集大成として残されている。お勧め。
SFが嫌いな方にこそおすすめのお茶の間SF ★★★★★
SF小説の雑誌などが初出のせいか、こんなに面白い作品でありながら、
SFらしからぬ、とばかりに
作者が評価をされることもあまりなかったようです。

壮大な設定、深遠な問いかけなどを用意したSFらしいSFは、
好きになればとことんはまれるかわり、
敷居が高く感じられることもあるものです。

この短編集は、そんなSF小説の主流からははずれて、
ひょんなことから日常生活がちょっとヘンになる物語が多めです。
何かに似ているとおもっていたのですが、やっと発見。
「ドラえもん」に似ているのです。
「ドラえもん」をはじめ藤子不二雄の世界は、現代の庶民の生活に、
S(すこし)F(ふしぎな)エッセンスが振りかけられています。
表題作の「ふたりジャネット」をはじめ。読者が気負わずに読める、
すこしの不思議がたっぷりと詰まった本です。

巻末にまとめてある、「万能中国人 ウィルスン・ウー」シリーズは、
やはり、本格SF好きにとっては異端の作品群です。
「宇宙の膨張はいずれ止まって、こんどは時間が逆に流れる」などの
ちゃんとした科学理論がストーリーに応用されているのだけれど、
これがまたおかしな笑える方向にばかり適用されているので大笑い。

科学者のウーが、難解な数式をつらつら書いて説明するシーンも
何度かあるのですが、この場合の数式は、理論的に正しいとかどうとか、
そういう疑問はうっちゃって、「ワハハハハ」と読み飛ばすためにあるようなものです。
そして、宇宙の危機の救い方やら何やらも、どこかマヌケで庶民的です。