聾唖者の教育現場には『手話法』と『口話法』の2通りがあり、主人公らは手話法の確立へと努めました。他方口話法は西川氏というこちらも教育熱心な方が中心となって広めておりました。そしてこれらの生き残りを掛けての闘いがはじまります。
手話の歴史、ろう者の文化を知るには傑作だと思います。
この『わが指のオーケストラ』は、生涯を聾教育に捧げた高橋潔氏の生涯を描いています。この作品の中で、障害者は家庭に閉じ込められ、人間らしく生きる権利を与えられることなく生きている様子が克明に描かれています。この世に言葉があることを知らない生徒達のために、家庭や地域に訴えていく潔の姿に涙させられました。
手話は、聞こえない人たちの大切な言葉だということ、聞こえない人が、一番自然にいられるはずのろう学校でさえ、手話が禁止されていた、という事実、そんな中で、聞こえない人たちや周囲の人が、どんな思いで手話という言葉を守り育ててきたのか。読んでいて涙が止まりませんでした。
ブームにのって手話を始めたばかりの人にこそ読んでほしい。そして、聞こえない人の、良い隣人になってほしいです。