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ワンちゃん

価格: ¥1,200
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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表紙にもこだわってくれ ★★★★★
単行本を持っているが、文庫化するにあたり、恒例の解説がついているだろうと期待したが、ないのである。解説なんていらないという人もいるだろうが、おまけとして重宝する人だっている。解説を書いてくれるアテがなかったのか。
さらに、もう一点。単行本の表紙が気に入っているが、文庫版のこの表紙は、作品の中身とどういう関係があるのか。(作者の娘さんか?)出版事情はわからないが、デザイナーに依頼するより生写真(?)の方が、コストがかからないのだろうか。
投げやりにしか感じられない。肝心の中身についていえば、悪くはないだけに…………
〈悔恨〉と〈赤〉、あるいは、〈悔恨〉の〈赤〉 ★★★★★
 まずは、表題作「ワンちゃん」について。本書帯に、「中国人女性・ワンちゃんが、「婚活」のために悪戦苦闘」とあり、はて、それでは、〈ワンちゃん〉自身が「婚活」に励む話なのかな? と思いきや、さにあらず。〈ワンちゃん〉は日本人の男性と中国人の女性との間に立ち、「婚活」をプロデュースするのに〈悪戦苦闘〉する。だけの話かと思いきや、さにあらず。太宰治は、悔恨の無い文学なんて、へのかっぱです、みたいなことをどこかに書いた。他人を〈幸福〉へと導こうとする過程で、自分の〈不幸〉が浮き彫りにされていき、〈ワンちゃん〉は深い悔恨の世界へと引きずり込まれる。〈ワンちゃん〉は、物語が幕を閉じて後、新しい一歩を踏み出すのだろうか? 
 表題作と併録作との共通点としては、主人公を襲う悔恨の念が――特に併録作においてはそれが顕著に――、痛々しいくらいに、しつこいほど丁寧に、書き込まれていること、〈赤〉という色彩が印象深く登場していること、などが挙げられるだろうか。
 併録作は、こりゃ、他人事とは思えないな、という箇所がいくつかあったが、なんだか、恥ずかしいので、具体的に書くことは控えておく。
 またしてもまとまらないレヴューになったが、詳しくは、本書を手にとってご確認のほどを。
設定に無理が多い ★☆☆☆☆
「時が滲む朝」を読み面白かったので、この作品を手にしました。
私は登場人物が中国人かどうかを別にして、一冊の小説としてこの作品を興味深く読むことができませんでした。
国の事情とは関係のない悲劇が多すぎると感じます。「老処女」についても同じです。
その悲劇も原因が本人にあるものや、意図的に主人公を悲劇にいたらせているだけで、物語の中で必要性を感じられないものがとても多くありました。
私は「悲劇」を題材にすることを否定しているのではありません。
設定上無理のある悲劇が多すぎるという意見です。
女性として、国を越えて感じるものアリ ★★★★☆
表題作「ワンちゃん」と「老処女」の二編。

軽い文体で、内容はなかなかグロテスク。一読しての、彼女のスタイルへの感想です。文体がまるであぶらとり紙のように軽くさらさらで、それ故ぐんぐん読み進められるんですが、何とも云えずモノ哀しい気分になる。
これはある程度年取った女に共通の感情が内包されているからでしょうか?
今時日本に暮らす女性の大部分が、女性性と若さという特権を良く理解し、それをうまく利用しているように感じます。
しかしそれが利用できなくなるいつかがくる。その”いつか”、今までのような扱いをしてもらえなくなり、嘲笑と同情の対象になる。
何となくそんなことを思いました。
しかし「老処女」は読んでいて哀しくなりましたね。
ああいう思考の人、絶対いるもん。
運命・・・しかし、ここは運命ではなく宿命としたほうが正しかったのではないかなとも感じました。
運命は自分で変えられるもの、宿命は定められた不変のもの、じゃなかったですっけ。

他の作品も読んでみたいと思わせる作家さんです。
そして、やっぱり中国と日本って、結構違うんだなあと思ったり。
一説によると、同じような容姿をして違うことをされるのが一番腹立つらしいです。
だから同じ人種間のほうが、差異によるトラブルが生じやすいとか。

文書におかしな所はあるけれど ★★★★☆
しかし、この作者の目線はいい。
日本に物質文明で遅れをとってしまった中国。その中国では、まるで昭和に起きた
ような出来事が起こっている。その波をくぐり抜けて日本にやってきたワンちゃん。
果たして幸福になれたのか?
昔、日本から西洋へいくのが憧れだった時代があった。
幸福の青い鳥はどこにいるのか?
日本人がこの大不況の時代、今一度、自分自身に問いかけてみる必要がある質問に対して
ワンちゃんは答えを出してくれているのかもしれない。