ナウシカとともに、トルメキア軍が土鬼と闘う最前線サパタに着いたクシャナは、かつての部下を自分の指揮下に取り戻すが、そのシーンが感動的。ともすれば「殺人マシーン」となることが優秀な兵士の条件のように思われがちだが(どっかの国の軍隊が中東で行っていることを見るまでもない)、実は、義のため、愛のため身をささげる一面があるであろうことが伝わる。クシャナと再会したセネイの涙が美しい。そして、ナウシカの盾となって斃れた兵士たち、そしてナウシカを守るために犠牲となったトリウマのカイ。読むたびに涙が出る。
この巻のクライマックスは、クシャナの指揮のもとで、籠城戦から騎馬隊が土鬼軍を急襲するシーン。リアルな「戦い」が展開する。戦術、戦略の巧みさ以上にクシャナの人間としての魅力が光る。
と、いうようなことを書くとまるで戦争賛歌のような印象を持つかもしれないが、戦いの悲惨さ、空虚さがこれ以降の巻では、これでもか、これでもかと言わんばかりに説かれる。早計に判断しない方が良い。
ナウシカばかりでなく、脇役の魅力も見逃せません。父王への復讐を果たすべく戦場へ向かうクシャナ、本来の役目を捨てちゃっかり寝返るクロトワ、ナウシカの後を追って腐海を旅するユパの一行。それに後にナウシカと出会って生き方を変えてゆく土鬼の僧、生真面目なチャルカもこの巻から登場し、役者が揃ってきます。