過酷な運命は少女を美しくさせるそうです
★★★★★
ディスイズ短編集!
少女漫画でありながら、テーマは恋愛ではない。
いうなれば、テーマは“少女”。
巻頭の「時をかけるまえに」と表題作「さよなら私たち」が、とてもいい。
「おとうとくん」も好きだな。
「Us,you and me」はデビュー作だそうだ。
漫画家を目指す女の子のお話。
最後のコマの台詞にしびれた。すごい度胸のある作家さんだなと思った。
この人の短編集をもっと読んでみたい。
ちょっと青年誌風なので、男の方が読んでもおもしろいと思う。
「少女」をモティーフにした佳作コミックス
★★★★☆
「伯爵と妖精」という人気少女小説の漫画版を手がけていることで知りました。
絵が繊細でキレイ、ブックデザインも雰囲気があるなあという印象で、
原作付きではない読みきり作品集ということで購入しました。
原作つきで無い作品はこのコミックスで初めて読んだのですが、
短編ですが、テイストはSFものから日常ものまで様々です。
どの作品も少女時代のきらきらしたひたむきさの美しさや
それゆえの残酷さや強さ、苦い部分がしっかり切り取られていて、
ラストにはちりっとした「心にひっかかる」感があります。
今「少女」であるマーガレット読者にはちょっとビターかも、
むしろかつて「少女だった」大人にオススメの作品かもしれません。
少女たちの純粋さ、そして強さ
★★★★★
5つの短編から構成されていますが主人公の女の子がどれもそれぞれの物語にあった雰囲気の表情をしていて作者の表現力に脱帽です。繊細で丁寧な絵を書かれる絵師さんですね。物語の最後のオチは5編とも「そうきたか!」とちょっと驚かされました。これからもオリジナル作品をだして欲しいですね。期待しています。
そこにあるのは危うさと切なさ
★★★★☆
表紙の少女の透明感ある色気・美しさに惹かれ、購入致しました。
コミカライズ版『伯爵と妖精』の作者が放つ読み切り集。
『時をかけるまえに』
舞台は少し未来の2025年日本。
見た目は現代とほとんど同じですが、
かなり未来の技術を予想したニュースがあったり、
タイムマシンを使って訪れた転入生をあっさり受け入れたりと、
未来なりの高校生のリアルがそこにはありました。
ただ根底に流れるのはいたって純粋な恋愛物語。
男女がお互いに惹かれ合ったり、想い合ったり、
それは現代となんら変わらない。
ですが、タイムマシン−時を超える技術に、
2人は翻弄されていく。
少し切ない‥でもとても愛おしい話。
『おとうとくん』
基本的にクールな主人公の女の子と、
少し変わった“おとうとくん”の出会い。
主人公に好意を持つ優等生の男の子。
最初は主人公も優等生に好感を抱くが、
何となく彼の弟の存在が気になる。
弟は優等生の兄とは違い、
基本的に暗いオーラを放つ存在。
ただその心の純粋さ、悲痛な叫びにも似た想いに、
主人公は“おとうとくん”のことが気になってゆく。
きっと主人公にも似た想いがあり、
“おとうとくん”との歩み寄りに、
つい心が締め付けられるような愛おしさを感じました。
『失恋ファミリーレストラン』
レストランに集まったのは、
同じ男の子と付き合っている5人のカノジョ。
主人公の女の子を含め、
男の子を忘れ、未来へ向かう決意をする。
最後のどんでん返しにはちょっとした恐ろしさを感じますが、
決して嫌悪感を感じないのが不思議。
『Us,you and me』
漫画家を目指す少女と作家を目指す少女の、
ただの友情よりも深い“繋がり”を感じさせる物語。
ひょんな一言から一緒に漫画を描き始めた2人。
でもそれは彼女たちの本当の夢ではなくて‥。
夢を貫く純粋な少女達の美しさ、気高さがそこにはあります。
ポンッと背中を押してくれるような、
優しい煌めきを感じさせる作品です。
『さよなら私たち』
とあるキッカケで死んでしまった2人の少女。
2人には生前の記憶が無く、ただその手はしっかりと握られて離れない。
三途の川を渡るには手を離す必要がある。
2人は下界に下り、生前の記憶の欠片を集め始める。
生前の記憶に彼女達は衝撃を受け、時には傷付きます。
そんな時隣にいたのは‥−。
儚く脆い、少女達の痛切で美しい物語。
そこにあるのは決して珍しくない、
少女達の心。
全体を通して透明感と切なさが漂う、
独特の雰囲気が流れています。
普通に少女漫画が読みたい方にはオススメしませんが、
読後の、透き通るようなひんやりとした切なさ‥悪くないと思います。
カミソリのように危うくて、ガラスのように透明な、
香魚子さんの世界観に触れてみませんか?