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シネマの快楽 (河出文庫)

価格: ¥798
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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   作曲家・武満徹(1996年没)と評論家で前東大学長の蓮實重彦による映画対談集である。武満は、尺八や琵琶をオーケストラに取り入れた『ノヴェンバー・ステップス第1番』などによって世界的に著名な現代音楽の作曲家だが、日本を代表する映画音楽作家でもある。黒澤明(『乱』)、成瀬巳喜男(『乱れ雲』)といった戦前からの巨匠の作品から、大島渚(『儀式』)、篠田正浩(『乾いた湖』)、中平康(『狂った果実』)といったヌーベルヴァーグの記念碑的作品群、小林正樹の『切腹』や『怪談』、勅使河原宏の『砂の女』といった異色作を手がけるなど、戦後の日本映画史に大きな足跡を残した。しかし何より、武満は自分の楽しみのために多いときには年に実に300本の映画を見るという大の映画狂であり、戦前にリアルタイムで山中貞雄監督の幻の傑作『街の入れ墨者』を見たという強者だ。

   本書に収録された対談は1980年代のもの。東京・六本木の映画館CINE VIVANTで上映された映画群、『ミツバチのささやき』『カルメンという名の女』『ノスタルジア』といった優れたヨーロッパ映画をめぐって行われた熱のこもった対談は、対象となる映画自体の豊かさによって輝きが増している。当時『監督 小津安二郎』を執筆、映画雑誌「リュミエール」を主宰して、映画ジャーナリズムに大きな影響を与えていた蓮實重彦と、映画実作者・武満徹の交わす言葉は、まさに映画のもたらす「快楽」に彩られている。(折口ケイ)

六本木の映画を見に行って ★★★★★
 自分の「顔」を持つ映画館が時として存在する。

 池袋の文芸座、銀座の並木座、吉祥寺のバウスシアター、神田の岩波ホールなど いくつも名前が出てくる。六本木にあったCINE VIVANTも そんな映画館の一つだった。

 文化戦略をとったセゾングループの映画での「顔」を担った その映画館は 優れた欧州映画を独自で発掘し 上映することで一世を風靡した。ノスタルジア、ラパロマ、エルスールなどの 目の覚めるような傑作を日本に紹介した功績は本当に大きかった。

 映画のパンフレットも脚本を収録するなど 非常に充実していた。中でも 蓮見と武満の対談は ある意味で 映画の門外漢であるお二人の 映画への愛に満ちたものであり 繰り返し読んだことを覚えている。そう あのパンフレットを持っているだけで 文化の香りを身にまとったような気がしたものだ。
 思えば スノッブな話だが。

 そんな二人の対談が本になっているのを見つけた。

 蓮見が その後 東大総長になるとは思わなかったし 武満は既に鬼籍に入られた。20年という年月を経て もう一度 お二人の「放談」を楽しんでいるところだ。