幻想的な「夢の世界」
★★★☆☆
表題作他24編の短編集です。
板東眞砂子ですから、女の性(業)を描いた作品が一番多いのですが、そこから派生して、愛情と憎悪(嫉妬)や、結婚とは何かとか、肉体と精神の問題など、女性を主人公にこれらの問題を「夢の世界」として描いて行きます。その表現は、夢とも現ともつかず、時には主人公が霊となって、自分の死体の周りを見たりと様々です。しかし、どの作品も作者の絶妙の筆致で、何ともいえぬ不思議な世界を展開します。
ただ、板東眞砂子の作品を多く読んできている人は、そこに作者独特のどろどろとしたものや、えげつなさが影を潜めていることに戸惑うかも知れません。それほど、作者には珍しい幻想的な作品群です。