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刑法概説 総論 第4版

価格: ¥4,725
カテゴリ: 単行本
ブランド: 有斐閣
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刑法学の一つの到達点 ★★★★☆
団藤・大塚説といえば伝統的通説として、最近は学会での批判も強い。
受験界でも、前田教授や大谷教授、西田教授などの教科書が人気で、大塚刑法の時代は終わった、という声も時々耳にする。

この『刑法概説』も、最新の議論に対応できていないと指摘され、教科書として使う人はかなり少なくなったようである。
しかし、それは大きな誤りであると言いたい。大塚博士は既に80歳を超えられていながらきちんと定期的に改訂を続けておられ、最新の判例までコメント付きで丁寧に引用されている。受験に必要な論点はすべてこの教科書に書かれた内容を理解していれば十分に対応できるものであり、最新の議論に対応できないということはまったくない。
文章自体もさすがに大谷教授や西田教授ほど初学者向けの丁寧なものではないが、簡潔に必要な言葉を厳選して書かれているため、「なるほど!」と思わされる部分も多い。

理論的には、団藤説を発展させた形で極めて一貫している。共犯論では共謀共同正犯否定説に立ち、65条の解釈でも少数説を採るが、これも論理的一貫性を維持するがためである。
違法性論ではもちろん行為無価値に立脚するが、「国家社会的倫理規範」などは曖昧で倫理を持ち込むものだと結果無価値論者からの批判が強い。しかし、優越的利益説も基準として曖昧なのは同じであり、要は「国家社会的倫理規範とはこういうものである」と自分なりのイメージが固められているかが重要であり、十分に説得力のある答案を書けるはずである。

少なくとも、大谷教授などの教科書や予備校本で一通り刑法を勉強した後で、一度は読んでほしい一冊である。戦後刑法学の一つの到達点が示された名著であり、受験的にも絶対に無駄にはならない。
刑法の伝統的教科書 ★★★★☆
 大雑把に言えば著者の刑法学の特色は、「折衷」にあると思われる。とりわけ「主観的要素」と「客観的要素」のそれぞれの長所をいかに融合するかに力が注がれている。その結論自体は妥当と感じられるものが多く、それゆえに本書は長らく刑事司法実務・(旧)司法試験生等に支持されてきた。

 もっとも、近時の判例・裁判例(および一部の学説)は注釈等でフォローされているものの、本書において引用掲載されている教科書等は古いものが多く、近時のものはほとんど掲げられていない。また、本書での著者の見解は、新しい問題に対応するのが困難な「伝統的通説」としてその理論構成等につき、近時の多くの刑法学の教科書・論文などでやり玉に挙げられることも多い。確かに、本書は、(現在の傾向に反して縦書・一色刷であることも含め)全体的に「古さ」を感じさせることも否定できない。
 
 それでも、本書では、著者が「刑法(学)とは何か」・「犯罪とは何か」・「刑罰とは何か」という根本的な問いに真剣に向き合って各問題を検討していることをその行間から感じ取れる(本書を熟読すれば、上述の本書の特色である「折衷」も単なる両者の「いいとこ取り」ではないことが分かるはずである)。この点は、近時、ロースクール講義向けに「わかりやすさ」を優先させて(場合によっては自説の展開を控えて)執筆されている教科書・体系書とは、(目的が異なるとはいえ)一線を画しているように思われる。
 さらに本書は四版へと改められたが、そこでは単に刑法改正への対応がなされただけではなく、前版までとは異なり因果関係論が構成要件的故意・過失に後置されるなど、大幅な修正も加えられている。刑法学の大家ともいえる著者が、いまなお自己の犯罪論体系の進展を図っていることには、敬服させられる。 

 もちろん、本書の見解には上述のように古さがあることは否定できず、ロースクール生等が自習の際に本書のみに依拠するのには、限界があると思われる。しかし、本書は、刑法(学)の国内外の歴史や最近の教科書等では深く論じられることのない「刑罰論」まで網羅されている。それゆえ、本書は、刑法学の勉強をひととおり終えた段階で、「刑法(学)」の原点を振り返る意味で読むのが最適であると思われる。また、重要な用語・概念にはドイツをはじめとする各国の訳語も併記されているので、この点は刑法学の比較法的考察をはじめようとする者にも有用であろう。
 
 要するに、本書は、最新の刑法学説を理解する前提として把握しておくべき優れた「伝統的教科書」であって、読み込むほどに味わいが出て来る一冊である。そして、このことは、刑事司法の実務や教育制度が転換点を迎えている現在でも、おそらく変わることはないであろう。