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桜雨 (集英社文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 集英社
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結末を知って、もう一度読み返したくなる ★★★★☆
 坂東さん=伝奇小説の巨匠、と捉えている私には少々物足りなく、違和感も覚えながら読み続けました。やはりこの人の作品は、メインに伝奇的要素があり、そのスパイスとして愛憎劇が付加されるという形が理想のように思います。単なる愛憎劇だけのお話なら、他にいくらでも作家がいますから。
 戦前と現在とで、登場人物を重複させ、しかも語り手を替えるというのは、おもしろい手法です。ただ戦前の物語の方で、早夜のような、単に負けず嫌いなだけで、人生に大した目標も持たず、目先の快楽だけを求めるような人物を語り手にしなかったら、全く違った雰囲気の物語になるだろうとは思います。また、現代の方の主役の彩子には、早夜のような人生は決して送ってほしくないとも思います。

 私から見て、あまり魅力的な人物は登場しませんでしたが、坂東さんの巧みな構成力で、最後まで緊張感を失うことなく読み切ることができました。
 結末もさすがに「坂東流」です。爽やかな読後感です。彩子の前向きな人生も予感させます。そして多くの読者は、もう一度読み返す必要を覚えるでしょう。
さすが坂東眞砂子 ★★★★★
スゴイ小説だなと思いました。
著者の本は、はまれます!

坂東眞砂子にしか書けない小説です!

大好きな一冊になりました☆
情念のホラー ★★★★☆
ストレートな恐怖はありません。
男女の間の愛憎をホラーにしたてています。
一種の大河小説であり、青春小説。時間を超えて謎解きをしていく面白さもあります。
人の幸せについても考えさせられます。
私は本書に描かれる東京の下町の描写が好きです。
リアルな生活感をもって、路地や電柱、古びた家屋、アパートの群れが迫ってきます。それらが小道具になっいます。
女の業と男の業 ★★★★☆
 太平洋戦争下の三角関係と、小出版社に勤める30歳前の女性の一人暮らしとが交互に描かれる。どちらの女性中心人物も、地方を嫌って上京してきて、半ば意地になって都会暮らしをしている。その点は変わらない。一幅の日本画をめぐり、二つの世界が交錯する。 三角関係のほうは、絵描きの男と二人女の業が真っ向から衝突する。どろどろの三角関係である。現代の彩子は、身勝手な大風呂敷男にあいそをつかして別れたばかりだ。いつの時代にもこういう男はいる。自分のことだけ考えて見栄を張っている。その点は変わらない。 戦前の芸術家の卵達のモダンな世界が生き生きと描かれていて面白い。 終盤に、ひとつ仕掛けがある。なるほど、さすが伝奇小説の得意な坂東女史ナリ、と納得できる(このアイデア自体は有名な映画と同じだけれど)。読後には平安な気持ちになれる。 「都市は冥界なり」。なるほど。葬儀屋の大磯夫妻が不気味だ。
最後に思わぬ事実が… ★★★★★
かつて、同じ美術学校に通っていた早夜と美妙江であるが、早夜は中退してモデルとなり、美妙江は卒業して画家への道を歩み続ける。戦火が激しさを増した頃、二人は一人の画家を同時に愛してしまうことになる。現在、年老いた早夜と美妙江は、古ぼけたアパートに同居している。一枚の絵の謎を追い求めて、小出版社勤務の彩子(29才)が彼女たちの元を訪れた時、驚愕の事実が判明する。現在と過去を交互に描きながら、最後に事実が判明する瞬間は劇的である。