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Drowning Ruth: A Novel (Oprah's Book Club)

価格: ¥1,959
カテゴリ: ペーパーバック
ブランド: Ballantine Books
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   ジェーン・オースティンから、ジョージ・エリオット、フローベル、ヘンリー・ジェイムズにいたる19世紀の小説家たちは、「社会的抑圧」という要素を使って作品にえも言われぬ緊迫感を加えた。ところが現代の緩和されたモラルや流動的な社会は、そのことを忘れて、古典といわれるこうした文学の多くを批判的に読んだりする。ジェイムズの小説『What Maisie Knew』の主人公メイジーは、なぜその「知っていること」を知っていてはいけなかったのか? 家族でセラピーを受ければ解決できたのに。昔の小説を読む醍醐味はすなわち、今の時代では理解しがたい感情を抑圧された世界や、不幸せな結婚をして若い女性が人生を棒に振るような時代に「再び入る」ことができることだろう。昔は、確実な避妊もできず、離婚することもかなわず、後ろ指をさされることなく別居し、自立することもできなかったのだ。

   クリスティーナ・シュワルツのデビュー作は、沈黙と禁欲という、失われた2つの「美徳」を主題にしたサスペンスだ。第1次世界大戦とともに広まったインフルエンザ騒動直後の1919年から物語は始まる。当時、ウィスコンシン州の小さな町にも電話や自動車、ダンスホールはあったが、人々はあいかわらずモラルに縛られていた。そんなところに1人の若い女性がいる。ルター派の農家の娘であるアマンダ・スターキーは、相手がカトリックであることを理由に、近所に住む男性との結婚をかたく反対され続けていた。

   数年後、ミルウォーキーで看護婦として働いていたアマンダは、悪い男にもてあそばれる。これを恥じたアマンダは神経衰弱に陥り、実家の農場に戻るのだった。だが、1年もたたないうちに、愛する妹マティルデが謎の溺死を遂げる。ほどなく戦地から戻ってきた妹の夫カールの目に留まったのは、娘のルースから離れようとしない義姉アマンダの姿だった。彼女はマティルデの死について何も語ろうとしない。アマンダは、とうの昔に両親にも死なれていた。「私が両親を殺したの。初耳でしょう?」

私が両親を死なせたの。私はちょっと疲れていて、軽いせきが続いていたわ。過労と睡眠不足のせいだと思って、ちょっと家に戻った。田舎で何日間か休養しようと思って。スイートコーンとラズベリーの収穫の時期に。私が町からお土産に持ち帰ったのは、美しいリボンとアンブローシャのチョコレート2箱、そして、死の贈り物だった。そう、私はインフルエンザを母にうつしてしまったの。そして母から父にうつった。順序は逆かもしれないけれど。

   才気あふれる作家シュワルツの描くこの重苦しい作品は、何十年にもわたるサーガものだが、マティルデの溺死した運命の夜を、何度も何度も回顧する。この作品1つから、クリスティーナ・シュワルツが流麗な文体をもつ作家であること、読者に違和感を抱かせない結末にこだわる作家であることが明らかだ。それがたとえハッピーエンドでなくても。