死の隣で感じる生
★★★★★
物語の時系列でいけば、二作目ということになる。
ただ、このスカイクロラシリーズ、5作品でひとつと考えるほうが
良いと思う。結局は、全部読む羽目になるのだから。
一貫したテーマは、死の隣で感じる生といったところか。
非常に乾いた世界観が、特に生死を際立たせているような気がする。
生きることとはどういうことなのか、これを気に考える
★★★★★
草薙が戦闘中に負傷し、草薙を取り巻く環境がだんだんと変わっていく。そして草薙はティーチャと再会する。
草薙が企業にとってどんどんと失ってはならないものとなっていき、自由に飛べなくなっていく様は社会の息苦しさを感じさせる。今まで自由に飛んでいたのに急に飛べなくなるというのは一体どういう気持ちなんだろうか。空を飛ぶことが草薙にとって生きること。飛んでいない草薙は死んだも同然。生きるということはただ心臓が動いているという単純なことではないのだと思った。草薙の思考はいろいろと考えさせられるものがあります。
そして相変わらず空戦シーンは面白い。読んでいてスピードが感じられるのでとても面白い。前回に比べると空戦シーンは少ないのが残念。レシプロ機の戦闘というものをよく知っておけばこのシリーズはかなり楽しめるものだと思う。
水素の世界観に拍手
★★★★☆
空で戦うことにしか生きている実感が持てない。
空に出ることでしか自分が認識できない。
それなのに、最後は地上に戻ってきてしまう。それが地で生まれたものの定めなのか。
水素の持つ空への憧れが、重たいくらいに感じられる一冊でした。
また、ティーチャに対する複雑な感情に関しても、直接的な表現は敢えて避け、それでも読者に分かりやすいように表現してあります。だって、地上では表情が乏しい水素が、彼を目の前に涙するなんて、大変珍しいことでしょう?
また、函南との絡みも気になります。今後の展開がどうなっていくのか、楽しみです。
スピード感(ストーリーの)が心地よかった。
★★★★★
グングン読み進めていけちゃうような、おもしろさではないけれど、好感をもって主人公を追っていけるスピード感がよかったです。まだこの本を読んでいるときは、私もこの本の中で戦いを楽しんでいるようなお気楽さがありました。おもしろいな!!と思いで次の「フリッタ・リンツ・ライフ」へうきうきとした気分で手を伸ばしました。次からだんだんとミステリーです
砂漠の中で行き場を失った旅人のよう。
★★★★☆
スカイ・クロラシリーズの第3弾。
今回は草薙水素の戦闘時代が描かれます。
飛ぶことだけを夢見て、飛んでるときだけに『生』を感じる。
敵を落とし、仲間が死に、それでも戦う。なぜなら空に飛ぶことが自由でいることを実感できる空間だから。
スカイ・クロアシリーズで一環して語られている、この感覚。
飛ぶ=自由。
キルドレとして一生大人にならない体を与えられ、死と生のすれすれの空間で戦い続けているにもかかわらず、『死』に対して重く捕らえるところはなく、自由に飛びまわれるために余計な重さをそぎ落とした戦闘機散香のように、文体もただ飛ぶ=自由についてのみ純粋に描かれている。
だからこそ、負傷し翼を失った戦士キルドレ草薙の療養生活は、いかに憂鬱で不自由で、砂漠の中で行き場所を見失った旅人のように空虚感が浮き彫りになってくる。
森 博嗣の文体は、自由な空を飛び回って生き生きしているときこそ、短く、詩のように瞬間瞬間を表現している。
その反面、地上に降り立ち、人間や他の仲間と接する時間は機械のように冷たく、心がないようにも見える。
そんなキルドレだから、普通の恋などしたことがない。だからカンナミに出会うことで、今までにない不思議な気持ちに気づかされたのだろう。
時はスカイ・クロアより以前。草薙を形成する人格のひとつがここでも明かされる。