医学的考察が・・・
★★☆☆☆
政権安泰のため、健康維持と侍医のご苦労がひしひしと伝わってきました。しかし医学的内容、ここでは主に内科的な見解については間違いが多かった。聞きかじりの知識を並べたから整合性がとれていない。整形外科医だから仕方ないのかな??
障害のある将軍が複数いたことの驚き
★★★★☆
等身大に作成された位牌、埋葬された遺体の調査といった資料と文献をもとに15代の徳川将軍たち(将軍以外の一族も何人か取り上げられいる)の健康状態や身体状況についていろいろな面から考察したのが本書である。最高権力者の将軍ということもあるかもしれないが、意外と多くのことがわかるのだなあというのが第一印象である。
強く興味を引かれたことは9代家重、13代家定と脳性麻痺の将軍が二人もいたということだ。
二人とも知的には問題のないタイプであったようだが、現代の考えからしたら驚きである。勿論、将軍が生産活動に従事するわけではないので身体的な障害の有無は大きな問題にはならなかったであろうが、現代ではまず間違いなく後継者から外されるであろう。健康とか障害とかについての考えが現代とは大きく異なっていることが伺える個人的には興味深い事実であった。
脳性麻痺は遺伝しないので、子孫を残すことが最重要の将軍にとっては大きな問題にはならなかっただけかもしれない。5代将軍綱吉も低身長症へのコンプレックスから精神的な難しさを抱えていたという指摘も面白い。また、低身長症の原因が内分泌異常であるならば子供を作れなかった可能性も高いわけで、有名な生類哀れみの令の背景として位置づけることも出来るであろう。
過度に個人の影響力を重視する立場はあまり好きではないが、やはり個人の資質や特性が歴史に影響を与えることもあるのだなあと思わされるところもあった。トリビアのような部分もあるが、歴史というものを考えるうえで参考になるところがある書である。
徳川の血
★★★☆☆
著者は医師・作家。
『モナリザは高脂血症だった−肖像画29枚のカルテ』、『歴代天皇のカルテ』など、歴史上の人物を取り上げ、その病気と死因を推定した本を何冊か出している。
本書はタイトルのとおり、江戸幕府の将軍15人、それから水戸光圀など家康一族の何人かを取り上げ、病気と死を語ったもの。資料としては、墓所が1950年代に発掘されたときの遺体調査、それから歴史的な文献である。
それなりに面白い本ではあるのだが、前著『モナリザは高脂血症だった』からは落ちると思う。資料を並べただけという感じが強い。スキャンダラスな姿勢も気になる。
アイディアは斬新
★★★☆☆
医学的側面から徳川将軍を分析するというのは斬新。身長、寿命、子供や側室の数、生い立ちから徳川将軍をみると、随分違った印象を受ける。
しかしながら、著者が考えたことが皆まで書いてある感は否めず、ストーリー性や結論めいた整理は乏しい。また、証拠が不十分なのに著者の大胆な『想像』が展開されているところが散見される点も気になる。著者が独自にあみ出した徳川将軍の覚え方や著者の夫婦間のやり取り等の蛇足が多く、それらがカルテとしての品を落としている。
地味だが真面目でおもしろい
★★★★★
現在NHKの大河ドラマ「篤姫」が人気だが、篤姫が嫁いだ十三代将軍家定が注目されたこともあってこの本を読んでみたら、現実はこうだったのかとまた別の興味をそそられ本全部を面白く読ませてもらった。ドラマで家定がアメリカ公使ハリスと対面するシーンで、家定が片足を前に出して歌舞伎の大見得を切るのだが、これが実は脳性麻痺による不随意運動であったとは!
歴代将軍の位牌の高さが実際の身長を表しているというのも興味深かった。15代将軍慶喜が駿府に退いていた頃、寝室では暗殺者の侵入に備えて側室二人と逆Y字状に布団を敷いて寝ていたらしいが、寝相が悪ければ明け方までYを保てず、三人はXかZのような形になったのではと色っぽい推測もあるが、使われている資料もしっかりしていて、将軍の健康面にスポットを当てた本としてはボリュームの割りにうまくまとまっていて良書と思う。